「観たい度○鑑賞後の満足度△ 作られた大正時代は兎も角全く戦前の日本軍人に見えない軍人達に萎えた。が、それ以上に話の設定自体に大きな穴がある。モガ衣装でリボルバー構える綾瀬はるかがカッコいいのが救い。」リボルバー・リリー もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
観たい度○鑑賞後の満足度△ 作られた大正時代は兎も角全く戦前の日本軍人に見えない軍人達に萎えた。が、それ以上に話の設定自体に大きな穴がある。モガ衣装でリボルバー構える綾瀬はるかがカッコいいのが救い。
①封建時代が終わって列強に追い付くのに必死だった明治時代、太平洋戦争に突き進んで行った戦前(昭和初期)に挟まれた大正時代は日本近代史の中でも特異な時代である。
その時代相がもっと映画に取り入れられるかなと勝手に期待していたが、それ程でもなかったのが残念。
②細野の言った通り、この映画が背景としている大正末期からさほどの年数を経たずして日本は戦争に突入し敗戦(自滅)したことに想いを馳せるとウルウルしてしまったが、大体この細野(水野)という男の人物像の設定が杜撰であり、それがこの映画の致命的な欠点だと思う。
③曲がりなりにも諜報機関を立ち上げ率いたほどの人間であるなら(後で組織が内部分裂したのならそれ程のリーダーでもなかったかもしれないし、それであっさり平和主義者に鞍掛するのも納得が行くより骨のない人間に見える)、国家予算の数割に及ぶ大金を作ってもたった一人で国を変えられる等と思わないだろうし、諜報機関のリーダーだったのであれば、スパイを辞めたとはいえ陸軍・海軍の内情は分かっていていずれその金を狙うこと、自分が姿を消せば残された家族や使用人にどのような害が及ぶか分かろうというもので(冒頭の惨殺シーンは陸軍の恐ろしさを強調するのと、この映画に引き込もうという手だと思うが、後で細野という男の事が分かると後味が悪いだけ)、この男がもっと先を読める優秀な人間であれば話はもっと別の方向(しかもそっちの方が面白そう)に進んだ筈。
④百歩譲って息子に託した平和への闘いはどうなったのか。結局日本は太平洋戦争(その前に日中戦争)を起こしてしまったし(その日中戦争も元はと言えば陸軍の一部が独走して満州事変を起こしたことに端を発したわけだし)、彼が戦後に吉田茂になったとかいう捻りもないし。
大体戦後の日本の平和だって経済大国になったからというわけではなく(軍事協力する代わりに金を出したという点では全く関係ないというわけではないが)、日本国憲法第9条のせいでもなく、もっと複雑な国際安保事情の故。
それを考えると如何にも作り話、絵空事の世界である。
「未来を救う悪になれ」というキャッチコピーも虚しい。
如何にも平和ボケな日本らしい発想である。
⑤それに、無駄な部分が多い。
清水尋也のリリーをしつこく付け回すスパイ/殺し屋?のエピソードは必要だったのか?映画に何の貢献もしていないように思える。こんなのに尺を取るくらいならもった描くことがありそうなのに。
相も変わらずワンパターンな演技の佐藤二朗扮するヤクザもよくわからない役。リリーに持ちかけた取引の内容も最後まで分からなかったし必要があったのかしら。
⑥最近のチマチマした或いは気勢の上がらぬ(今の日本社会を反映しているのか)日本映画(アニメは除く)が多い中で活劇が増えるのは好ましいがもう少し内容がないと。アクションだけで中身が伴わない或いはアクションシーンが活きない様な映画はダメである。