「学問のススメ」破戒 大吉さんの映画レビュー(感想・評価)
学問のススメ
内容と同じように誠実に作られた作品だと思います。
演者はもちろん、セットや小道具、衣裳、音楽、照明、スタッフもみんな良い仕事をしてるんではないでしょうか。(桜の花びらと蛍のCG要らなかった)
間宮祥太朗演じる瀬川丑松が、独白するところ、子どもたちに告白するところでは、両隣の女性がハンカチで涙を拭っていました。
差別の問題はもちろんですが、学問をすることの大切さを訴えているところが良いと思います。
矢本悠馬が実にいい味出してるなぁ、ガム君もみしまる君も「破門」のチンピラもよかったけど、今回も最後持って行ったなぁ。いつか彼の主演で男はつらいよみたいな映画作ってくれないかな。
真面目な作品だからお客さん入ってないかと思ったら、結構入ってました。子どもたちをおばけずかんに送り出して、間宮祥太朗観に来てる若いお母さんたちが多かったようです。シネコンていいですね。
昔みたいに二本立てにして、こういった作品を娯楽作品と一緒に上映したらどうでしょう。
亡くなった父親が市川崑監督の「破戒」の話よくしてたの思い出しました。映画っていいですね。
市川崑監督の破戒は原作を、超えたと言われてますね。私は市川雷蔵さんが、大好きだつたので何回も見ました。雷蔵さんに比べると間宮さんは明るくて、現代的だなと思います。勿論間宮さんも今の若い人達に、近い感性を、持ち合わせていて演技も真摯に取り組まれていて素晴らしいとは思います。何より彼を見たくて観客動員出来たことはこの作品を、より広く見ていただけるという最大級のメリットが、あります。
けれど、何処かやはり物足りないのです。
市川崑監督の、丑松は完全に、猪子蓮太郎に、打ちのめされているのにも関わらず父の戒めを守ろうとします。
その戒めを破ってしまったらもうどこにも自分の場所が、無くなってしまうという苦しみが、もっともっと大きかったのだと思います。その苦しみは、当事者だけが持つ差別への憤りと、それを隠し通さなければならないという自分の自身への後ろめたさその戒めを、破った後に残される絶望などの入り交じった、感情だと思うのです。市川崑監督は、主人公丑松に、その部分を、大きく持たせ、猪子蓮太郎と、その奥さんに、未来への希望を、含ませているのです。
だから、直接的に、石を投げられている場面などはなくても部落の人の、虐げられた状況は、最初の、牛に殺される父の姿、屠殺場の描写、父の弔にも隠れてしか参列出来ないことなどでひしひしと、伝わって来るのです。
藤村の小説は身分制度が、無くなったら学問こそが立身出世の道だと真面目に信じられた時代たったのですね。そういう意味ではこの作品は、原作に、近いスタンスなんだと思います。