「思い出は忘れるべきか、大切にするべきか」今夜、世界からこの恋が消えても 三輪さんの映画レビュー(感想・評価)
思い出は忘れるべきか、大切にするべきか
クリックして本文を読む
静かに泣ける作品でした。この作品の大事なテーマは、人間にとって思い出とは忘れ去ることが大事なのか、それとも大切にすることが良いのかを、観る人に問うものかもしれません。道枝は心臓の病気を持った青年であり、ヒロインは交通事故で子供を救ったのですが、記憶障害を起こします。この記憶障害の設定は「50回目のファーストキス」被りますが、特に既視感はありません。ヒロインは寝てしまうと前の日の記憶はありません。だから道枝は彼女を楽しませるために尽くし抜くのです。彼の行為はまさに菩薩のような行為なのです。ヒロインは彼から生きることの素晴らしさ、人生を学びます。そして道枝は突然死してしまいますが、その彼の思い出を記憶障害の彼女から取り去ってしまうのか、残してあげるのかで、周りが悩み続けます。しかし、結局あるがままの記憶を無くさないことが正解だったのです。つまり、記憶がなくなるとしても、ヒロインの魂はちゃんと覚えていたのでした。その落とし所に泣けました。ヒロインは彼を魂で思い出すことで、前を向いて歩き始めるのです。役者の上手い下手は別にして、人間にとって大事な記憶や思い出に対して、丁寧に考えている名作だと思います。そして恋愛ストーリーの三木名監督の面目躍如と言った作品と言えるかもしれません。追記 道枝の姉の芥川賞作家役も印象に残りました。ヒロインの福本は、浜辺美波と雰囲気がよく似ています。それから全編を通じた映像の淡い感じが、とてもしっくりと合っていました。
コメントする