劇場公開日 2022年10月21日

「説明を省略し感情を抑制した会話から伝わってくる冷酷な現実の手触り」グッド・ナース 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5説明を省略し感情を抑制した会話から伝わってくる冷酷な現実の手触り

2023年9月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

本作とドキュメンタリー映画『キラー・ナース』は米国最大の連続殺人事件を起こした看護師チャールズ・カレンを題材としたもので、ともに昨年10、11月にnetflixから配信開始された。

事件の背景や、捜査の過程、その全体像に関しては『キラー・ナース』に詳しく描かれていて、事件そのものへのコメントもそちらに書いておいた。

本作はカレンの元同僚であり、刑事たちの捜査に協力した看護師エイミーの視点から、カレンがどのような人物か、その犯罪の露見を妨げる医療システムがどのようなものか、刑事たちの活躍ぶり、エイミー個人の抱える病気等との闘いを描いている。

基本的には事実に忠実に描かれているが、極端に説明を省略していること、感情を抑制した会話、BGMの少なさ等による映像の手触りがドキュメンタリー感覚の冷やかさを通じて、現実の冷やかさ、冷酷さを伝えている。

肝心のカレンの描き方も、ごく普通の優秀で思いやりのある同僚看護師となっており、たしかに「グッド・ナース」像そのものなのである。この人物像は最後までほとんど変わらず、警察の事情聴取でヒステリックに自白を拒むシーン以外、実に静かな人物という点でリアルだ。
同じく刑事たちも感情は抑制し、暴力沙汰がゼロなのがユニークかつリアルでいい。

徒然草枕