「グッド・ナースは誰か」グッド・ナース humさんの映画レビュー(感想・評価)
グッド・ナースは誰か
子どもの頃、母の遺体を病院に放置された経験があると看護士エイミーに明かした新入り同僚チャーリー。
彼は患者の「尊厳を守る」といい、仕事中には亡くなった人のからだをとても丁寧に拭い、冷たくなった顔に近づきじいっとみつめる。あの表情。意味深で息を潜めて観てしまうシーンだ。
チャーリーを演ずるエディは細かな表情や歩き方、姿勢などで、時折コントロールされていないような不気味な雰囲気を醸し出す。
そして明確な理由を示さないまま、チャーリーのまわりで犠牲者が増えていくことにエイミーも気づく。
チャーリーが、生まれ持っての殺人鬼でないなら、
そんな精神性をつくりあげ、物腰柔らかくやさしい微笑みを浮かべる彼の裏の顔として根付かせたのは一体何?
哀れな母の死に心を痛めた少年の深い傷。淀みを残したままの思いは「尊厳を守らなかった」病院を糾弾するための反撃のスイッチになったのだろうか。
はたまた、彼の物差しで「尊厳を守りたい人」を選んで自分なりの正義を尽くしていたのだろうか。
エイミーの不安と同時進行で私も考える。
彼の犯罪を止めることができるのか…
ジェシカ演じるエイミーは心臓病を患い勤務先に隠しているため1人で耐える発作のシーンがこちらまで息がとまりそうなくらいリアルだ。
アメリカの保険制度の厳しさ、母子家庭の働き手として幼い娘たちを養う必死さ、反抗期の子を育てる悩みなどが重なる辛い時期に自分の状況を理解してくれ、心の拠り所になりはじめた同僚への疑惑。辛さがつのるがエイミーの看護士としての命に対する倫理観、母としての正義感、人としての愛の深さに揺らぎはなかった。
不審な死が続き病院を調べていた検事の調査に協力しはじめるエイミー。
やがて今までも病院を転々としながらチャーリーが患者を殺してきたことを知る。
さらにどの病院も、明らかに彼を疑いながら解雇するのみで事件にせず、ただ保身に走る体質を垣間見せるのだ。
しかし、エイミーはチャーリーを見逃すことなく、正面から追い詰め自供させる。
彼のために。
チャーリーは連続殺人の理由を語った。
「誰も僕を止めなかった。」からと。
病院ビジネスの危うさを糾弾しつつ、止まらない坂道を転げ続けていく自分をもうどうにもできなかったことを意味した言葉か。
その本心は、やはり「止めてほしかった」のだろう。
同様の医療犯罪は世界中でたびたびおきる。
本作品も実話を元につくられ、実際の犠牲者は目を疑うほどの数に及ぶというラストの字幕に震える。
保身のための隠蔽、尊厳に対する概念を考えさせる社会派作品のメッセージは、現実感を帯びた主人公二人の静かで壮絶なる巧みな演技により、演技を遥かに超えてスクリーン中にたぎる。(訂正済み)
満塁本塁打さん
辛いご経験があったのですね🥲
たいへんなことを越えられてきましたね。
重なりあう原因のなかにそれが含まれていたのは間違いないかと。。。
チャーリーの様子、思い出すたびに感じます。
コレは心理学的に考えると深いですねぇ。私もウン十年前母親事故で失い検死にきた警察の専門担当官に喰ってかかりましたから、雑にグルグル巻きに遺体をくるんでいたので・・。でも間違いなく、その衝撃が「彼」をシリアルキラーに変貌させました。貴殿の深い考察勉強になります。でも医者の手術なんて未だに殆どシークレットですから日本医師会ごときに偉そうな顔されたくないです。愛する伴侶や子供がいたら展開も変わってたと思います。😊😊😊イイねありがとうございました。
こう言った事は訴訟と能力主義の国、アメリカだからこそ起こる事件だと思いました。アメリカは民主主義の国と言いながら、弱肉強食の部分があると非常に思います。日本もそうなりつつあると実感しています。