劇場公開日 2022年10月21日

「自らの安穏を捨ててでも彼奴を告発する勇気は有るか?!  周囲の保身によって男の狂気が野放しにされた実話ベースのサスペンススリラー映画」グッド・ナース O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自らの安穏を捨ててでも彼奴を告発する勇気は有るか?!  周囲の保身によって男の狂気が野放しにされた実話ベースのサスペンススリラー映画

2022年10月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 米国ニュージャージー州の正看護師として働いてきた傍ら、80年代後半から00年代初頭の16年間に40人からその10倍近くの患者を殺害したとされる"ヘルスケア・シリアルキラー"のチャールズ・カレンをモデルとしたサスペンススリラー。
 彼と同僚となったICUのナースを主人公に、彼女がシングルマザーとしての疲弊した生活と生命にかかわる病で前後不覚となりながらも己の倫理観を奮い立たせ、管理責任を問われて隠蔽しようとする病院側を尻目に告発に動くストーリーです。
 作中のチャールズはいわゆるサイコパス的なパーソナリティーとは違った共感性の伴った苦労人であり、彼と友情を結んだ主人公エイミーが苦悩しながらもその裁きを希求する経緯が言いようのないリアリティーに満ちていました。
 そもそもの要因は彼の幼少期から受け続けた不遇な扱いと上手くいかない人生のステップへの焦燥や悲憤からのものと思えますが、これだけの夥しい数の被害者を出すに到ったのは病院組織の狡猾なリスクヘッジと秘密主義が背景にあるのは間違い無いでしょう。
 そして、出来るだけ相手にリスクを押し付けて利益だけを最大化しようとするモラルを失したビジネスが行き過ぎると巡り巡って人の命までリスク換算されてしまう…そんなメッセージも孕んだ作品だと思いました。

O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)