「マイ・マザー 暗殺者という名の母」ザ・マザー 母という名の暗殺者 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
マイ・マザー 暗殺者という名の母
昨日は母の日。一日遅れてしまったが(とは言っても見たのは昨日)、こんな“母映画”はいかが?
“お母さん、ありがとう”な感動系じゃなく、“母は強し!”なアクション。
アフガニスタンに従軍していた女兵士。スナイパーの腕を見込まれ、スカウト。武器密売組織の一味に…。
が、奴らの悪事を知り、FBIに密告。裏切る。
FBIのセーフハウスで取り調べを受けていた時、奴らが急襲。深手を負う。
一命は取り留めたが、その時お腹の中には子供が…。
産まれてくる子は私が守る。手放したくない。
が、子供の将来や平穏な人生の為に、断腸の思いで手放す。
本当の母は暗殺者。そんな自分と一切関わる事なく、平穏な人生を送っていたが…、
12年後。里親の元で、ゾーイという名で平穏に暮らす娘。
唯一の味方であるFBI捜査官から、娘が狙われている事を知らされる。奴らが、裏切った自分への報復として…。
娘は奴らに捕らわれ…。捕まえた一味の一人を尋問し、居場所を突き止め、救出に向かう…。
これを2時間かけてやるのかと思ったら、この件は前半部分。
娘を救出、送り届けるその道中…。
ぎこちないというより、娘に対して冷たく突き放す母。
それに対し娘は…。誰かからそれとなく聞いたのか、それとも勘がいいのか、実母である事を知る。
そこを再び奴らが襲撃。捜査官は殺されるが、隙を突いて窮地を脱す。
母と娘、二人だけの逃避行が始まる…。
単なる母奮闘&娘救出アクションではなく、ここが肝になっている。
娘に会いたかった母。実母が気になっていた娘。
が、その再会は、決して感動的なものではなかった。
母は依然、突き放すような毅然とした態度。
跳ねっ返りの強い娘。
衝突、言い合いを繰り返すばかり。
それでも母は娘に一人でも生きていける術を叩き込む。
身を隠す寒地で、銃の扱いや狩りなどのサバイバル。
憎しみ、怒り、不満…それらをバネにして、スパルタ教育を受ける娘。
ただただ、母である事を言って欲しかった。優しい言葉の一つでもかけて欲しかった。
でも、何一つ…。どうして言ってくれないの…? 会いたくなかったの…? 愛していないの…?
厳しい態度を取り続ける母。その意思は変えない。何故なら…。
銃撃、チェイス、肉弾戦…要所要所のアクションはふんだんに。
母子ドラマもシンプルに見せるものがある。
が、ツッコミ所が多い。母はプロの暗殺者なのにボロや隙がちょくちょく。娘も普通の女の子なのに射撃に才能を見せる。捜査官は心許せるが、FBI自体は無能。敵組織も何故執拗に狙ってくるのか、そもそも組織の姿も漠然とし、こちらもなかなかに間抜け連中。何より、娘の父親は…?
アクションの見応えやスリル、分かり易いドラマなど、それなりに悪くはないのだが…。
何と言っても本作は、ジェニファー・ロペスを見る作品。
身体を張ったアクション。
複雑な胸中の母。
強く、美しく、悲しみも交え、体現。
奴らに居場所を突き止められ、決戦。
娘も自分も危機を迎えるが、闘い、守りきる。
その闘いの渦中で…
娘は知る。母の思いを。
母は変わらず秘めていた。娘への愛を。
暗殺者として、間違いや過ちばかりを犯してきた。
そんな中、自分がまさかの子供を出産。母となる。
母として、娘に自分のような生き方をして欲しくない。
こんな自分が母だと知って欲しくない。だから、他人であるよう突き放して接してきた。
でも、その思いは変えられない。
唯一、確信している。あなたの母である事は、決して間違いではないという事を…。
ベタかもしれない。
でもベタだからこそ、母の愛は強いのだ。