エリザベス 女王陛下の微笑み : 特集
まさかの【賛否両論】斬新映画!“私のすべてをご覧に
いれましょう”英女王を記録した本作、あなたの是非は
2022年に96歳を迎え、在位70周年となるイギリス君主エリザベス2世の初長編ドキュメンタリー映画「エリザベス 女王陛下の微笑み」が、6月17日から公開される。
1930年代から2020年代までのアーカイブ映像からエリザベス2世の足跡をたどり、貴重な幼少期の姿や25歳の若さで即位した麗しき姿――激動の時代を力強く歩みながら、今もなお、にこやかに公務に励む女王に迫っていく。
ところが、実は本作、“お行儀のよいドキュメンタリー”ではない。賛否が起こるほどの斬新さに満ちた、野心的な側面もあるのだ。
さまざまな瞬間が切り取るエリザベス2世の“ほほ笑み”。そこに隠された真実とは?
これは女王陛下を批判するでも、礼賛する
でもない――意外な製作経緯を紐解く
世界史上で最高齢かつ、存命では最長在位の君主。そして、現在も在位している最古の国家元首であるエリザベス2世を、批判するでも礼賛するでもなく、独自の視点で迫っていく。
「エリザベス 女王陛下の微笑み」は、ずばり映画ファンの心を刺激する一級のエンタテインメント作品に仕上がっている。ドキュメンタリーなのに、エンタメ? 一体、何が特別なのか?
●イギリス君主エリザベス2世、初の長編ドキュメンタリー映画 ナレーションなしの斬新構成
存命する著名人、しかもエリザベス2世が主役ともなれば、堅苦しいドキュメンタリー映画なのではと予想する人もいるはず。ところが、いざ見始めるとその予想は早々に裏切られる。
イギリスの国民的シンガー、ロビー・ウィリアムズの代表曲「Let Me Entertain You」(あなたを楽しませたい)でド派手に幕があがる本作は、説明的なナレーションや作り手の直接的な主張を一切排除。その代わりに、膨大な映像アーカイブを軸に、女王が歩んだ激動の時代を映し出し、彼女とともに人生の喜怒哀楽を味わったイギリス国民のドラマをも描き出す。
つまり斬新なストーリーテリングが施された、目と耳で“楽しむ”ドキュメンタリーなのだ。ここまで王室をエンタメ化してしまって大丈夫? そんなハラハラ感さえも、本作にとっては絶妙なスパイスになっていて痛快だ。
●コロナ禍により始動 「ノッティングヒルの恋人」ロジャー・ミッシェル監督の遺作に
手がけたのは、「ノッティングヒルの恋人」「ゴヤの名画と優しい泥棒」などで知られるロジャー・ミッシェル監督。2021年9月に急逝した同監督にとっては、これが遺作になってしまった。
そもそも「エリザベス 女王陛下の微笑み」に着手したきっかけは、新型コロナウイルスの感染拡大により、ミッシェル監督が次回作の撮影機会が奪われてしまったから。撮影ができないのなら、アーカイブ映像を用いたドキュメンタリー作品を製作しようと思い立ったのだ。
スポーツ、音楽、歴史上の人物。さまざまな候補リストの筆頭にあがったのが、エリザベス2世だった。
生前にミッシェル監督は、「既視感のある、ありきたりな王室ドキュメンタリー」ではなく、「機知に富んだイタズラ心とサプライズがあるものを作りたい」と取り組んだと語った。イタズラ心とサプライズ。これぞまさに「エリザベス 女王陛下の微笑み」の最高の魅力であり、最大の争点なのだ。
【賛否】試写では絶賛多数! が、なかには怒る人も…
理由は「女王をいじってる」「予想外の映像だった」
国民に愛されるアイコンであると同時に、国家のピンチや王室のスキャンダルが巻き起こると、真っ先に批判の矢面にさらされる存在でもあるエリザベス2世。
本作もまた、英国式のシニカルな切り口によって、通常のドキュメンタリー映画とは一線を画す内容で、早くも賛否両論が巻き起こっている! 納得の理由を深堀りする。
・賛否の理由①:エリザベス女王の素顔に迫る…攻めすぎて“いじってる”!? あなたはどう思う?
映画の公開を前に実施されたマスコミ向け試写では、その斬新な語り口が評判となり、本作に絶賛の声が多く寄せられている。一方で、攻めた切り口に対して、戸惑いや困惑、怒りを覚える鑑賞者もいたとか……。
例えば、用意されたスピーチ原稿にケチをつける女王の映像が堂々と使用されていたり、鉄板フレーズである「夫と私は」を笑い声とともに映像にのせたり。見る人が見れば、侮辱的と捉えられかねないシーンもあるのだ。
また、競馬を好む女王が、トップを走る贔屓の馬を目撃し、小躍りして喜ぶなんて姿まで。そんなエリザベスの素顔を惜しみなく(容赦なく?)ドキュメントする姿勢を、“いじり”と受け取るか、愛あふれたリスペクトだと感じるか?
こうした映像が保存されている事実、さらに映画のために二次使用が許可された驚きも含めて、ぜひ、自分自身の感性で自由に判断してほしい。
・賛否の理由②:マジメなドキュメンタリーかと思いきや…MV調の映像がひたすらスタイリッシュ
ドキュメンタリー映画に欠かせないナレーションがない、というのも見どころ。ナレーションの代わりに、女王の素顔と英国の歴史を雄弁に物語るのが、音楽史を彩るポップ&ロックの名曲たちだ。
冒頭のロビー・ウィリアムズをはじめ、ナット・キング・コールの代表曲「モナ・リザ」や、UKスカの代表格マッドネスのヒット曲「アワ・ハウス」、イギリスが生んだスーパースター、デビッド・ボウイの「ヒーローズ」のカバーバージョンといった楽曲が随所に散りばめられ、ひと言で表すと「とにかくスタイリッシュでおしゃれ」!
また、映画使用になかなか許可を下ろさないことで知られるザ・ビートルズの「ノルウェイの森」「ハー・マジェスティ」が聞けるのも、うれしい驚き。1965年、彼らが大英勲章を受け取るため、バッキンガム宮殿を訪れる貴重な映像も必見だ。
さらにNetflixで配信中の伝記ドラマ「ザ・クラウン」、そしてロンドン五輪開会式のために撮影された、女王本人とダニエル・クレイグの“共演”映像も登場し、映画ファンなら思わずニヤリ。大衆に愛されているからこそ、成立するポップカルチャーとのコラボレーションもまた、エリザベス2世の実像を浮かび上がらせている。
【実際に観た人の評価は?】著名人に語ってもらった
「最高に楽しかった」「クイーンが裸に」
最後に鑑賞後の著名人たちのコメントを引用し、特集を締めくくろう。
◆黒柳徹子
即位70年、女王でいらして、こんな機嫌のいい女性は珍しいと思う。
間には戦争もあり、ダイアナ妃の離婚とか、どんなにつらいことがあっても、次から次へと仕事をこなし、ユーモアたっぷりに反応なさる96才。
笑顔がステキだ。競馬の馬券を買って、当たると現金をうれしそうに受けとる。
そのお札の顔は自分だ。ビートルズも出る。
国民が女王を敬愛してるのが、よく分かる。面白かった。
◆操上和美(写真家)
クイーン・エリザベスが裸になった。
深い愛とリスペクトに満ちた眼差しで紡いだ女王陛下のドキュメンタリー。
人生にはこんなにも深い悲しみと喜びがある。
◆栗原類(俳優・モデル)
おそらく今世で僕らが生きている時代でここまで印象的な貴族は彼女以降現れないのではないとか思います。
彼女が今まで生きて築き上げてきた功績を改めて再確認する良きタイミングかもしれません。
◆多賀幹子(英国王室ジャーナリスト)
堅苦しい偉人伝と思い込んでいたが、とんでもない。女王が、こんなにチャーミングで人間味あふれる人物だったとは。今まで見たこともない女王に会えて、最高に楽しかった。
◆デーブ・スペクター(放送プロデューサー)
何がすごいかと言うと、エリザベス女王の目線から初めて見る日常!
エリザベス女王が女王だけに「上から目線」と思ったらこの映画では初めて女王目線になってる!
◆ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
激動の70年の間、不動のイメージを維持してきたエリザベス女王を少しだけ生意気に、でも愛情を込めて、想像を絶するほどの映像資料からコラージュしたさりげない労作です。
さて、あなたは本作をどう見るか? 感想が楽しみだ。