ザ・ホエールのレビュー・感想・評価
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先送りされた 自らの暗い物語
レビューだかエッセイだか判別しない作文を、毎度している私ですが、私、正直に書きませんよ。だって正直であろうとすると、むしろ自分から遠のいてゆく気がするから。
死を意識しながら生きてますか?。私、意識してません。だから私、死にかけ状態の人の気持ち、分からないの。ただ私が死にかけたら、心配して駆けつけてくれる人、一人でもいたら、案外、それだけで、いい一生なのかも。
ヒトを好きになりました。家族は棄てました。パートナーも、家族と信仰を棄てました。パートナーが病んだのは、私の愛が罪だから。私には、赦しを乞う資格がありません。私は罪と共に去りぬ。
自らの暗い物語を先送りして。
自らの暗い物語を先送りして…。
ヒトは生涯をかけて罪を犯し、生涯をかけて贖罪を乞う。そのツールとして、信仰がある。仮にそうだとして、神様はどうしてヒトを創ったの?。あるいは、ヒトはどうして神様を造ったの?。
古来より、バラとアザミは夫婦だそうです。バラとアザミ。近づく程に、お互いを傷つけ合う。それでも夫婦なんです。アザミとアザミの家族もいます。いずれにせよ、互いに傷つけ合いながら、互いに分かり合おうと寄り添う。おぞましくもあり、美しくもある。
裏切り傷つけ合うのがヒトの性(さが)だとしても、お互いを大切に想うのもまた、ヒトの性。そうありたいものです。自らの暗い物語の先に、たとえ赦してくれなくても、自分のことを心配してくれる人がいる。それだけで、ヒトは救済されるかも。
生と死、性と家族を真正面から捉えた、すごい映画です。とはいえ、生理的に受け入れ難い映画ですね。…正直なところ。
ラスト10分がすべて
当初は予定に入れてなかった作品ですが、アカデミー賞主演男優賞の演技を観たくて鑑賞してきました。
ストーリーは、8年前に妻と娘のエリーを捨ててボーイフレンドのアランとの恋を選んだチャーリーが、アランが亡くなったことで過食と引きこもりの生活に陥り、一人では身の回りのこともできないほどの巨体となり、アランの妹で看護師のリズの助けを受けながら生活していたが、自分の死期が近いことを悟り、最期にエリーに自分の思いを伝えようとするというもの。
巨漢のチャーリーの過去と秘めた思いが徐々に明らかになり、ラストで「白鯨」に収束する展開は悪くないです。「白鯨」を読んだことがないので、内容の上で本作とどのような関連があったのかはわかりません。ただ、彼にとってはかけがえのない思い出との結び付きと、おぞましく膨れ上がった自身の体を連想させるという二つの意味があったのだろうとは思います。冒頭と対をなすラストシーンで、小難しい文章のもつ意味がわかり、一気に感情をもっていかれ、思わず目が潤んでしまいました。
とはいえ、よかったのはラスト10分だけ。序盤から一向に盛り上がらない展開に、なかなか乗れませんでした。いろいろな人との関係からチャーリーの人生観を描こうとしているのか、家族への思いを描こうとしているのか、はたまた神への信仰について描こうとしているのか、よくわからず、焦点が定まらなかった印象です。捨てた家族との絆を取り戻し、その姿を見てリズも救われたぐらいの方が、自分にはわかりやすくて好みです。
また、場面転換がほとんどなく、ひたすら会話劇が繰り広げらるれるだけなので、絵的にはまったくおもしろみがありません。仕事帰りに鑑賞したのですが、新年度スタートの激務の疲れも手伝って、睡魔と戦いながらの2時間となりました。瞬間寝落ちは数知れず、そのため大切なシーンを見落としたり、セリフを聞き逃したりしたかもしれません。だとしたら、本作のよさが理解できないのは自分の責任です。
主演はブレンダン・フレイザーで、彼の演技は確かに受賞に値すると感じました。その他の俳優はホン・チャウしか知らず、彼女は安定の演技を披露していますが、エリー役のセイディー・シンクも堂々たる演技です。
ブレンダン・フレイザーは
演劇でよろしい。
人間は
怠惰な生き物である。
怠惰でいることが持続可能であることを
叶えるためにこれまで多くの発明開発をしてきた。
この怠惰な生き物である。
と言うことを僕が理解したのは、ジブリの鈴木敏夫さん
のラジオ番組でドワンゴの川上さんの発言だった訳だが
ラジオを聴いていただけで、気づけたのだから怠惰な
人間の発明に感謝すべきところである。
と感想から逸脱し始めたところで、ひとまず戻ろう。
その怠惰な人間がまず省エネで生きようとするならば
まず捨てるべき行為は、考える。と言うことなのだが
この考えると言う行為が、宗教や学校という現場では
厄介で、問題となるイシューである。と言うことを
見事だし示してくれた作品であるといえよう。
その上、考える人間が生み出した発見が所謂
歪で異質で、世にとって受容し難い存在なのだが
それがありのままの人間が抗い生み出した
人間が気づいていなかった真理である。と
言うことに気付かせてくれるのが本作である。
まぁ、長々と書いたけどね。素晴らしい映画だよ♪
いとしのエリー
ほぼ全編の舞台となるチャーリーの住居は昼間ですら暗く、会話も陰気なものが多い。
そんな中で、リズとの間で交わされる些細なじゃれ合いがオアシスのよう。
鑑賞にストレスを感じるほどの重苦しさは、最後の解放を際立たせるためだったのでしょう。
リズがチャーリーの望みを汲むのは分かるが、その他の人物が強制的に救急車を呼ばない不自然さはある。
ただの看護師なのにリズの処置や診察が適切すぎるとも思う。
チャーリーは全肯定していたが、エリーは相当捻じ曲がっている。
『白鯨』も読んでないし、宗教の知識もないし、アメリカ的な言い回しにも親しくない自分には難しい部分が多い。
でも、終盤(泣きはしないが)涙腺にくるものがあったのも事実です。
個人的に好きだったのは、エリーの宗教批判。
感情的ながらも鋭く、納得感もあり、かつ分かり易い物言いは、推敲した文章ならいかほどかと思わせる。
チャーリーの言う「文章の才能」は紛れもないものだったのでしょう。
過去(特に妻子を捨てたときの心境やアランとの関係)が薄く、感情移入しきれないのが残念。
でも、少数精鋭の演技には目を瞠るものがありました。
普通のドラマに見えつつも超斬新
スタンダードの画角で、少し変わっているとはいえ、ごく普通の現代社会を写し取ったようなドラマ。それを音でもって感動的に仕立て上げようとしている雰囲気があり、かなり警戒を持っての癇性ではあったけれども、結果めっちゃ感動しました。別にしてやられた感覚でもなく、ナチュラルに楽しめた感じです。
見る前からこの題名は?と疑問に思っていて、内容を見ても分かりような分からないような曖昧だったとは思いますが、このタイトルと内容をリンクさせて楽しんだ部分はかなりあります。そして、それが結果的にはかなり斬新な作品だったと思うに至るまでになった気がします。
この社会というのも色濃く出ていて、なんかすんごくいい映画だったなぁと素直に思いました。
ブレンダンフレイザー、見事な復活。
たったひとつのシチュエーションでも、これだけ感情は揺れ動く
結局キレまくる登場人物たちがいとおしい。そして何しろ圧が、、、
スタンダードサイズのスクリーンが幅狭く、暗い室内で心臓止まりそうな巨体をこれでもかと見せつけられる。
外の天気は玄関の扉越しのみで示され、外を通る人影はブラインド越し。舞台装置・部屋のしつらえの細やかな演出はとてもリアリティがあった。マジックハンド、必需品。
重要な役柄へのアジア人女性の配置、ど真ん中にLGBTマター、さらにタイムリーな宗教2世問題までストーリーの核に絡んできて、本格的な社会派ドラマかと思いきや、あるきっかけで太り続けてこうなってまった男の日常動作の一つ一つが、見る者によってはホラーっぽくもあった。
私なりに受けたメッセージは「正直に生きろ」、かな。
自分の行動の結果がどうなるかは良かれと思おうが悪意のあるものであろうが、制御不能。
とにかく見るだけでフィジカルな「圧」との伴走だったので、ラストシーンはあの演出で助かった!
悪意と涙の感動の狂気の組み合わせ!
素直に泣いていいのか?なんか嫌味を感じてしまう内容である。
太った人を小馬鹿にした差別的なタイトル、『ザ・ホエール』。しかし、それは、ハーマン・メルヴィルの『白鯨』のクジラのことだと、もっともらしく意味深な感じに見せようとするところの嫌らしさ。ゲイの人に対する気持ち悪さをわざと誘うかのようなオープニング。太った人やゲイの人を冷やかしバカにするという悪ガキじみた下品な感性をわざと刺激するかのような真性悪の仕掛けがところどころに散りばめられている。その際たるものは、異様な特殊メイク、そして、まさしく精神を病んで太ってしまったブレンダン・フレイザーという俳優そのものである。
結婚して子供をつくり、かつゲイであるが故に男性を愛してしまい、女房子供を見捨てた極悪人。そして、愛していた男性が自死し、ショックで精神を病み過食症で極度の肥満になってしまう。あるいは、人生を純粋に正直に生きようとしただけであり、憐れな人ともとれる。
彼はただの太ったゲイの極悪人、自業自得であり、差別的にみることを正当化できる人もいるかもしれない。しかし、一方で、人様のプライベートな生き方にいいだの悪いだの口だしをして、いい悪いなどを判断することがいかに醜悪なことであるか、彼の憐れな生活をこれでもかと見せつけられるたびに自制を促されるのだ。
人間とは、不完全なものであり、救いが必要であるとキリスト教的な慈悲の目でみることもできるが、キリスト教の欺瞞的な教えに対するチラチラとした批判がある。キリスト教とはさも矛盾に満ちた宗教でありながら、そのことを十分に理解していた主人公が最後はなんと文字通り天に召されるのである。なんとも人を混乱させ、クジラが空を飛ぶ!と見たまんまを言葉にすれば、それは人を小馬鹿にしたブラックな笑いを誘うシーンでもあるが、自制心をもってみれば彼は神のもとへいったのであり感動的結末でもあるのだ。ダーレン・アロノフスキーは悪意に満ちたものと、感動を誘うものを無理やり両立させようとする本当におかしな趣味の監督だ。なんだこのセンスは!といつも首をかしげたくなるが、面白いのでつい気になってしまう。
非常に憐れであり、かつ下品な感性を刺激し、小馬鹿にされうる存在、ザ・ホエール。矛盾にみちた存在の映画のエンドロールの終わりに、ほわ〜んというクジラの鳴き声をインサートしてくるところが、悪意に満ちあふれていると思ったが、笑えてしまうという自らの愚かさを反省させられるという、キリスト教的にいえば、告解を誘発する内容である。
BP238/134
太り過ぎて鬱血性心不全で今週末にも死にそうと言われた大学のオンライン講師の男が娘と交流しようとする話。
9年前、彼氏との人生を選び妻と8歳の娘を捨てたチャーリーと、太り過ぎて生活のままならない彼を気にかけ身の回りの面倒をみてくれている看護師のリズ、そして高校卒業が危うい記憶力抜群のやさぐれ娘エリーに、死にかけた時にたまたま訪問してきたカルト宣教師トーマスを軸に数日間のやり取りをみせていく。
頑なに病院に行くことを拒むチャーリーの罪と後悔、そしてチャーリーの悲しみを知るリズ、何だかんだと父親が気になるエリー。
登場人物がみんな善人で、性善説でしか成り立たない話しではあるけれど、人との関わりはそういうものだろう?という感じですかね…。
人の目や意見を気にして良い子ちゃんぶるなよと、おぞましいと思われる本性を明かせよと、それこそが本質であり、そこから生まれる明るい未来はあるはずだと訴えかけてくる気がした。
彼は恋人との愛と共に沈んでしまうのか。それとも、 娘への愛を梃子に浮上できるのか
長い間離れて暮らしていた娘との絆を取り戻す。
本来なら{ロードムービー}で描くべき主題も
本作の主人公『チャーリー(ブレンダン・フレイザー)』は
そうはできぬ事情がある。
死期が間近はありがちな設定も
270キロを超える巨体は、
歩くことはおろか動くことや呼吸すらままならぬ。
歩行は補助具を使わねば不可能だし、
喘鳴も酷く、時として酸素吸入が必要。
ため、カメラは居室であるアパートの中から
一歩も外に出ることは無い。
ほぼほぼ{ワンシチュエーション}ドラマの体裁。
勿論、彼がこのような体になってしまったのは
怠惰が原因ではなく、
恋人であるゲイの男性が拒食で亡くなってしまい、
その反動から引きこもり、過食に走った結果。
とことん、ナイーブなメンタルであるのだ。
そんな彼を何くれとなく気遣う介護士の『リズ(ホン・チャウ)』だが、
次第に明らかになる二人の関係性は、あまりに悲しい。
窮地に陥っていた『チャーリー』を
布教に訪れ、たまたま救った宣教師の『トーマス(タイ・シンプキンス)』も
ストーリーにアクセントを添える。
物語の発端は至極シンプルも、
主人公が囚われている恋人の死には、
キリスト教的な倫理観も絡み、
日本人には相当に縁遠いし、判り難い。
とりわけ、肉欲を二重の意味
(愛欲と食欲)に使われても、
聖書に詳しくはない我々には
どうにもピンと来ない。
肝心の娘との関係性は一向に進行せず。
自身から会いに来はするものの、態度は傍若無人。
遺産が目当てなのか、それとも
大学の文学の講師であった父の技量を利用しようとするだけなのかも
判然としない。
母娘を捨てて、しかもゲイの恋人の元に走ったことを恨む思いの一方、
想像を絶する姿に成り果てた実父をそれでも救いたいとの感情がないまぜになり、
なんともエキセントリックな行動を取ってしまう。
が、その根底には
(母親も同様だが)分かち難い愛情があり、
それが終幕では父親の魂の救済に繋がりはする。
タイトルは白抜きの「The Whale」と示され、
ここで劇中繰り返しふれられる「白鯨」を暗喩する手の込んだ仕掛けと理解。
『メルヴィル』の小説の主人公『エイハブ』は
結局は「モビィ・ディック」と運命を共にするも、
これは復讐の成就なのかは微妙に思えるところ。
多くの乗員すら道連れにしているわけだし。
いみじくも劇中のエッセイの内容が言い得て妙であり、
過去の呪縛から逃れることこそが
真の救いなのではないか。
とは言えこれも、キリスト教的倫理観ではあるけれど。
それらが詰まったラストシーンと解釈したい。
すごい・・・ブレンダン・フレイザーさんの演技に圧倒される名作
ホントに特殊メイク?と思わせるほどリアルな太り様、過食症による300kg近い肥満体で常に痛々しく苦しそうなブレンダン・フレイザーさん渾身の演技は2023年オスカーの Best Actor (主演男優賞)受賞をもたらし、ここ10年ぐらい姿を見なかったブレンダンさんの輝かしい復活を世界中が大歓迎したのも納得です
監督はダーレン・アロノフスキーさん
私もお気に入りの名作「ブラック・スワン」でも主演のナタリー・ポートマンさんを2011年オスカー Best Actress(主演女優賞)受賞に導いた名匠
2017年の「マザー!」以来の新作で、本作でも素晴らしい演出に魅了されました
ブレンダンさん演じる主人公チャーリーが死期を悟り、8歳の時に見捨てて以来 会っていなかったティーンエイジャーの娘と再会、親子の絆を取り戻そうとする密室劇
ほとんどの時間がチャーリーの薄暗い家の中で展開されます
終始映像が暗く、外は雨、見るもおぞましいチャーリーの風貌に加えサスペンスフルな暗い映像、意味深なカット、不穏な音楽
全編に渡って全身が強く締め付けられているようなものすごい緊張感に包まれ、全てが結実していく後半からラストは圧巻、こんなに疲れた作品は久しぶりでした
そして、娘役のセイディー・シンクさんも常に爆発寸前のティーンエイジャーをエネルギッシュに演じ、特にラスト辺りの演技は素晴らしかったです
良い意味で見終わった後どっと疲労感に襲われる、すごい作品でした
食べ過ぎとレビュー保存には気を付けて
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