劇場公開日 2024年12月6日

「どうかなあ。ちょっとキレイにまとまりすぎている感じもするんだけど。」ホワイトバード はじまりのワンダー あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0どうかなあ。ちょっとキレイにまとまりすぎている感じもするんだけど。

2024年12月10日
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鑑賞方法:映画館

「号泣した」「泣けた」みたいなコメントが多い映画はあまり信用しない。世の中、泣きたい人が多く需要があるから泣かせることが目的の映画が生まれてしまう。
誤解なきよう。この作品がそういった安易な映画だと言っているわけではない。
「ワンダー 君は太陽」でトリーチャー・コリンズ症候群の主人公オギーをいじめた子供たちの一人ジュリアン。彼はいじめの咎でもって放校された。彼は彼なりに事件の後遺症で苦しみ、対人関係のあり方が分からなくなっている。この作品はまずもって彼を救済する物語である。加害者側のトラウマとそこからの救済という構造は尋常ではない。そして救済の手段として用意された祖母サラの物語。70年以上昔のフランスでの、ナチスに弾圧されたユダヤ人一家と、サラを匿おうとする勇気ある人々の物語である。これもまた尋常ではない。悪者と善良な人々との描き分けがやや画一的なのは気になるが、それは壮絶な生死を賭けた物語であり、また何と言ってもサラとジュリアンの納屋での日々が美しく儚い。
だからこそ、サラの物語が、70年後にジュリアンを救う流れがあまりにも綺麗事に見えてしまうのである。サラは絵の世界で成功しレジェンドになっている。ジュリアンは金持ちの坊っちゃんである。祖母の話を聞いて心を聞くところまではよいが、社会活動に目覚めました、っていうのは安易ではないか?またサラのメトロポリタン(?)でのスピーチも「人間万歳」以外はあまり心に迫ってこない。空虚なのである。ジュリアン(フランスの)が作ってくれた鳥の木彫りを触りながらのスピーチなのでもっと説得力を期待したのだが。まあ言葉なんていうのはそんなものかもしれないけれど。
人間は過去から教訓は得ていく。でも善良や勇気と言った資質が時を超えて伝わっていく奇跡はそうそう起こらない。伝わらない、伝えられないこともある。その苦さみたいなものをもう少し感じられないと本当の感動を生み出すことはできないのかもしれない。

あんちゃん