「役者の無駄遣い」はい、泳げません カモシカヤマネさんの映画レビュー(感想・評価)
役者の無駄遣い
何が描きたい作品なのか。悲劇からの脱却なのかコメディなのか。両方をうまく扱えていないため、バランスが悪くて観ていて気持ちの折り合いがつかない。
冒頭の『納豆シーン』が想像なのか現実なのかも明確にされておらず、いきなり意味不明で、気持ち悪くて引いてしまい、何のためにこの表現が必要だった?と考えてしまい、そのまま前のめりになれずに続きを観ていた。
主人公の長谷川博己、ヒロインの綾瀬はるか、麻生久美子はとてもいい俳優なのに、監督はそれを活かしきれていないと感じる。
主人公の現恋人役の女性が、あまり見かけない俳優で知らない。なのに、大切な所を持って行く大きな役どころ。もうちょっと魅力のある実力俳優を起用しなければ無理があると思った。
「この人じゃなければダメ」「二人は幸せになってほしい」と感じないから、別れた時は何だかほっとしたし、ヨリが戻ると残念な気持ちにもなった。
それこそ、綾瀬はるかランクの俳優を恋人役にしてればよかったんじゃないのか。
だけどきっと、これは意図されているんだろうな。
綾瀬はるか演じるスイミングクラスのコーチが、主人公にとって大切なキーマンであるけど、2人の間には決して恋愛感情は抱かせない。 恋人役に同等の役者をつけてしまうと、綾瀬はるかの存在が薄くなって価値が下がるような気がする。
水着姿のかっこいい綾瀬はるかは色気を封印してとてもすてきだったが、なんだかもったいない。
主人公の抱えた哀しいトラウマが克服されるまでを描いた、心の再生ストーリーなのに、どうものめり込めなかった分、最後までじっくり見るのが耐えられなくて所々早送りしたり、倍速で見てしまった。
心に残らない映画。