「音楽ライブのドキュメンタリーとして秀逸。映像を残してくれてありがとう」ザ・ビートルズ Get Back:ルーフトップ・コンサート K2さんの映画レビュー(感想・評価)
音楽ライブのドキュメンタリーとして秀逸。映像を残してくれてありがとう
先行してネット配信された計7:48の長編3部作(2021)の第3部からライブシーンを切り出した短編映画(と思われる。本編を見ていないので真偽はわからないが)。同じ映像を元に、映画「Let It Be」(1970/Michael Lindsay-Hogg)が作られ公開されているそうだが、想像するに、映画としてはきっとつまらない記録映画に違いない(同じく、見ていないので真偽はわからないが)。
本作も記録映画としては普通、かもしれないが、1969年当時のメンバーや周りの雰囲気がそのまま伝わって来てとても楽しめ、ライブ映像としては秀作だと思う。自然と足でリズムを取りつつ見ることになったのは単純にビートルズのサウンドの力によるものか。世代が違うし、別にビートルズのファンでもないし、ビートルズのライブ映像自体、初めて見たのに等しいので、実際のところは「動いているJohn Lennonをほぼ初めて見た!」というのが一番の印象。演奏自体が当時の基準でどれだけ特別なのか、技術的に上手なのか下手なのか、専門家的なことはよくわからないし、俯瞰的な視点でいえば、ビートルズ自体は(結果として)解散に向かって突き進んでいた過程の1シーンだと思われるが、あの瞬間に彼らが演奏(レコーディング)を楽しんでいたことはハッキリと伝わってくる。(George Harrisonはそれほど楽しんでいなかったようにも見えるが。屋上が寒すぎて。) これが最後のライブである一方、それが全て記録されている、という事実は当時の録画技術・環境を考えれば素晴らしいの一言で、奇跡といってもいいかもしれない。
後半、騒音の苦情を盾にライブを中止させようとする(ヒラ)警官の映像をやたらと強調しているが、そういうストーリーに仕立てたいのか?と、記録映像とは言え、演出方針にはちょっと違和感があったかも。後から警官本人の孫でも出てきて当時の回想インタビューでも出てくるなら、ドキュメンタリーの演出としてアリかもしれないが...。当時(ライブ当日)のリアルな雰囲気の描写ではあるが、ロンドンの名もない警官の退屈で冴えないぶっちょう面を延々と見せられても興ざめで、後から思えば、その間、演奏に集中できずもったいなかったなあ、といささか残念に感じました。
(ビートルズの天才と、絵に描いたような凡人の対比、なのか?)
余談として...オノヨーコの終始退屈そうな表情も印象的。
映画「イエスタデイ」(世界中がビートルズを知らず、自分だけがビートルズを知っている、という設定に翻弄される売れないミュージシャンの話)を、また見たくなりました。