「物語の終焉を飾る圧巻のライブと、かつての熱狂がないロンドンの街角との対比が堪らない」ザ・ビートルズ Get Back:ルーフトップ・コンサート SGさんの映画レビュー(感想・評価)
物語の終焉を飾る圧巻のライブと、かつての熱狂がないロンドンの街角との対比が堪らない
ギシギシと軋む木板の上に設置された楽器と機材。
何台ものカメラやアンプ、スピーカーのコードが張り巡らされた急ごしらえのステージに現れる4人。
映画のシーンとして計画されたレコーディングと撮影のため、あらかじめ前の通りにもビルの玄関にも確信犯的にカメラが設置されている。
おもむろに「GET BACK」の演奏が始まり、その爆音が平日午後の平穏な街に一気に降り注ぐ。
空からの突然の爆音に顔をしかめる人、思わぬハプニングに喜ぶ通行人、隣接するビルの屋上から眺める若者たち。
しかしそこにかつてのビートルマニアの熱狂はない。
この時は誰も予想しなかった、のちに伝説となる歴史的なライブが幕を開けたー。
ビートルズに関するいろんな想いを書き綴るとあまりに長くなり過ぎるので、感想だけ。
現場にいる誰もがこの"事件"の正体が何なのか、まるで理解できていない様子がよく分かる。
当時"スウィンギング・ロンドン"と呼ばれ世界最先端のファッションとカルチャーに彩られたロンドンの人々のカッコよさや、制止に踏みこむ警官たちとスタッフとののらりくらりの押し問答などもとにかく全編が楽しくてワクワクする。
IMAXの大スクリーンと高品質サウンドで、演奏のみを純粋に堪能したいという人にはそれらの描写や声が挟まるのは不本意かも知れないが、個人的に大好きな憧れの時代のロンドンの街角にタイムスリップしたかのような臨場感を全身で感じられるまさに至福の時間。
数年前にビートルズ聖地巡礼で実際に訪れたサヴィル・ロウ、アップルビル(今はアバクロキッズが入居)では味わえなかったあの頃のリアルな空気感、時代の躍動感が目の前に広がっていた。
そしてこのライブとレコーディングを最後にバラバラになっていく4人の儚い運命にも想いを馳せる。
1曲目から涙腺崩壊。
腹の底のほうから撃ち込まれるようなサウンドに自然と体も動く。マスクの下で曲を口ずさみながら周りに気づかれないように足を小刻みに揺らす。
こんなのじっとして観てられない。
そこにビートルズがいる。
IMAXえげつないわ…。
定期的に"ビートルズ沼"にどっぷりハマる期間があるが、しばらくまたハマりそうだ。
限定公開と言わず、頼むからロングランでやってくれ!