カラーパープルのレビュー・感想・評価
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新しいアプローチで作られた現代版カラーパープル
ザ・ミュージカル映画!
どのナンバーも素晴らしく、実際にブロードウェイの舞台に立っているファンテイジア・バリーノをはじめとした、実力あるキャストたちの歌声と存在感はさすがと言えます。
魅力的な楽曲と圧巻の歌声への感動を加味しての評価です。
事前にスピルバーグ版を視聴していた事もあり、ストーリー性に関しては正直そちらに軍配が上がるなと感じてしまいました。
性的虐待や暴力、男女・人種差別描写、それらによる登場人物たちの痛みや苦しみに対する解像度や重みの比が違うなという印象は否めません。
結末に関しても個人的には前作の方がしっくりきました。
しかし、今作はあくまで舞台版を脚色したミュージカル映画。
頻繁にミュージカルを観劇する立場からすると、実際に舞台上で演じられている作品の様な場面展開にはテンポ感の良さを感じましたし、小説ベースの作品とはアプローチが異なるのも納得できます。
演者の実力ある歌唱によってストーリーが補完されている部分も多く、作品が伝えたい言葉やメッセージを心震えるような歌声でもって感じることができるという点では、ミュージカル映画としては正解だと感じました。
(ミュージカルに不慣れな方からすると、逆にそれらが不自然に感じられるかもしれませんが…)
どのキャストも素晴らしかったのですが、個人的にはダニエル・ブルックス演じるソフィアの存在感が抜群でした。
彼女が歌う ”Hell No!” の素晴らしさで一気に心を鷲掴みにされましたし、スクリーンだけでなく実際にブロードウェイの板の上で歌う彼女をこの目で観たかった!と、強く思わされました。
ソフィアという女性の芯の強さを持ってしても折れてしまう程の、差別と現実。それを経験しても尚、再び強さを取り戻して蘇った彼女の生き様は、簡単に真似できるものではありません。
セリーが強さを顕にした食卓のシーンで、ソフィアがセリーの事を神だと思ったと告げますが、前作同様に、このシーンでは涙が止まりませんでした。
ソフィアという女性を見事に演じきったたダニエル・ブルックスに拍手を送ります。
主人公セリーを演じたファンテイジア・バリーノも素晴らしかったです。
セリーは一見するととても弱い存在に思えますが、決してそうではなくて、あの過酷な環境で苦しみながらも生き続けるだけの強さを持っている女性なのですよね。それを表に出せるだけの勇気と覚悟が、まだ持てていなかっただけ。
そんなセリーが、ソフィアやシュグといったタイプの違う女性たちの強さに影響を受け確実に変化していく様が、説得力のある演技と歌声で表現されていました。
生まれ変わった人生を美しい笑顔で伸びやかに歌い上げる “I’m here” は、涙無しには観られませんでした。この曲を歌うのが、自分の努力によって手に入れた場所というのがまた良いですよね。
ラストはミュージカルらしいハッピーエンド。
これまでの経緯を思えば、セリーがミスターという人間を赦す事は並大抵の努力では無理であろうと感じてしまいます。
しかし、神は人間に ”愛と赦し” を与える存在なのです。
大雨の夜に畑に倒れたミスターは、神に赦しを乞い、叫びます。目覚めた彼が手にしたあの一通の手紙は、まさしく神からの贖罪の恵みであったのではないかと感じます。それを正しく受け取り行動した彼を、神はその愛でもって赦されたのではないでしょうか。
そして、そんな彼を神のように広い心によって赦したセリーの元へ、最愛の妹が子供たちと共に戻って来るのです。
ソフィアがセリーの中に神を見たと言った言葉が、ここでも思い出されました。
“あなたのことを考えなかった日はない”
“私の魂はあなたのおかげで乗り越えられた”
優しく力強い歌声による “SUPERPOWER (I)” と共に、セリーの半生が映し出されるエンディングがまた素敵でした。
キルトのような鮮やかなイラストでダイジェストのように流れる彼女の半生は、裁縫という武器で人生を立て直したセリーが、これまで必死に紡いできた生きた証なのですよね。
自分の中の神と和解し、これまでの痛みや苦しみを赦し、手放したセリーが、それらを思い浮かべながら歌っているように感じられました。
前作でソフィアを演じたオプラ・ウィンフリーと監督のスティーヴン・スピルバーグに加え、音楽を手がけていたクインシー・ジョーンズが製作総指揮として参加。主演を演じていたウーピー・ゴールドバーグのカメオ出演もあり、前作へのリスペクトを感じつつも全く新しいアプローチで作られた現代版カラーパープルでした。
0.01%の幸せとも呼べないくらいの幸せ
酷い境遇だ。
でも、生きてさえいれば幸せが訪れるって事なのだろうか…とても不可解だ。
おそらく10代から話しは始まって、その時点で子供を産んでて、更に孕ってる。産まれた子供とは、直後に引き離される。ろくでもない男に嫁がされ、DV以上の事が続く。家の中で人権など認められてないような扱いだ。その旦那は、シンガーに入れ上げ、その世話をやらせる始末。
…そういう時代だったのだろう。
事実上の奴隷制度や人種差別が大手を振って通りを闊歩してる。
まるで生き地獄だ。
そんな彼女も晩年になって幸せを掴むのだけど…生き別れた妹と再会し、子供にも会い、孫にも出会う。自分に地獄を味合わせた元夫とも笑い合える関係だったりする。
生きてさえいれば、報われる時は必ずくるって事なんだろうか?まぁ生きてるだけでも駄目なのだろうけど。
最後の唄だけに何故かウルっとする。それ以外の時間は早く終われと思ってた。
つまり、俺には立ち去る選択肢があって現実ではない。でも彼女は逃げられない。
オリジナルの公開当初はもっと肌感が強い時代でもあったのだろうと思う。
アレが繰り返される事はないだろうとは思うけど、露骨てはなく水面下では行われてる節もある現代にうんざりもする。
99%の不幸の中、訪れる1%の些細な幸せがあれば、人は生きていけるのだろうか。
彼女は常に絶望と隣り合わせにいる。そんな中でも生きる糧を見出す。妹の存在だったり、友人だったり。まるで不幸が当たり前だから、慣れきってしまってるようにも見える。
時代に殺されかけそうにもなるのだろうが、ある意味強い。
神の御心のままになんて言葉が頻繁に出てくるけれど、それを隷従とか盲従に捉えてしまうのは俺の奢りなんだろうな。
晩年ではあるけれど、彼女の我慢が報われて良かったと思う。
脚本は普通だが音楽は素晴らしい
素敵な話だとは思うが、正直、話の運び方とか演出は普通…
ミュージカルらしい元気いっぱいなダンスと音楽は華やかで前向きなものばかりで良かったです。
主人公が覚醒するまでが長くて、せっかちなイマドキ視聴者は辛い…パパも旦那ももっと早く殴って蹴って沼に沈めとけと思いました。
黒人差別・女性蔑視の時代に強く生き権利を主張した女性たちを讃える気持ちは伝わってきましたが、その分男性が見るには辛いかも?
愛情深い男性も出てきましたが、基本的に男性が悪役、女性が正義というスタンス。悪い女性が居ない。
でももう予定調和でも良い。
約束されたハッピーエンドは泣けました。
ミュージカルにする前が想像できないくらいミュージカルで、サウンドトラックが聞きたいです!
全ての女性へのアンセム
黒人女性の敵は黒人男性
パワフルすぎる女性「三英傑」。
こんなに力強さにあふれたミュージカルは見たことがない。セリー、シュグ、ソフィアの3人の女主人公は、見た目もパワフルだが、生き方もパワフルだ。そして歌とダンスに最初から最後まで圧倒される作品だ。。
簡単に言ってしまえば、セリーが人としての誇りを勝ち取る物語である。前半のセリーの状況はあまりに過酷である。義父から性加害を受け、見も知らない中年男の妻として家畜の様に売り飛ばされ、夫からは暴力的に扱われる。唯一の心の支えだった妹のネティとは生き別れてしまう。セリーもこれが自分の生きる定めだと半ば諦めているような所がある。それがソフィアとシュグという強くて自立した女性達と付き合っていく中で、変わっていくのを見るのがとても楽しい。彼女にとってソフィアとシュグは憧れる存在ではあるが、自分とは違うと思って、なかなか自分を変えようとはしない。しかし交流を深めるにつれて、彼女の内から本来の自分を取り戻したいという気持ちがどんどん強くなっていくのが分かる。その原動力になった3人の友情というか、結びつきは本当に心地よくて力づけられる思いがする。
あることをきっかけに、セリーは生まれ変わる。自分を肯定し、自分の意志で生きていくことを決意する。それはタイプは違うがソフィアやシュグと対等な存在になったということでもある。
「神の赦し」のような、キリスト教的なにおいは少し気になるが、人間の尊厳みたいなものを、こんなにも力強く分かりやすく表現した映画はあまりないだろう。
個人的には、リトルマーメイドのアリエル役、ハリー・ベイリーが出ていたのが嬉しかった。
信じ続ける女性
1900年代初頭から中期のアメリカ社会における黒人女性の置かれてる立場を主人公の目を通して描く。
生きづらい時代の中で虐げられる彼女の目を通し、妹を信じ仲間を信じ生きる様がとても情熱的に描かれている。
またその情熱を歌に乗せることで、その想いがストレートに心に響いてきた。
重厚なドラマのミュージカルとしても楽しめた。
昔の方が面白かった、比べるのもどうよと思うけど
昔観たインパクトが強くて(1回しか観てなくてそれも40年くらい前なのに)あーここはエピソードの人物が違ってる!って気になってしまってそれも没頭できなかった理由です。昔の方のエピソードで一番覚えてる、「黙ってろ!」と夫に怒られてそれからまったく何十年も口をきかなくなったエピをミュージカルでみんな歌うのにどうするんだろうとある意味ワクワクしていたのですが、そこ、なかったですね・・・
ミュージカル好きですが、よいなーと思った曲が1曲しかなく、それも観賞後残らなかった。字幕が上手くない。特に歌詞。
昔の物は観ずにこれだけ観てたらまあまあかも。ウエストサイドストーリーもリメイクしてたけど、昔監督した当時の流行り(ベストセラー)を、今この時代に作り直すスピルバーグ(が作り直してる訳ではないけど)の思惑を知りたい。
生きる活力をもらえる
ミュージカルシーンが歌・踊りともに華やかでとても良かったです。黒人差別や女性差別要素できつくなってくるときもありましたが、ミュージカルで気分を持ち直すことができました。
登場人物全員に人間味があって、一生懸命に生きる彼らの姿に感銘を受けました。人生は理不尽の連続だけど、その中でも希望を失わず戦い続けることが大事だと思わされました。
印象に残ったのは、ミスター(セリーの夫)の変化です。セリーに暴力をふるいひどい扱いをしていた彼でしたが、セリーが出て行ってから反省して最終的にはセリーと和解して友人になっていたのが驚きでした。長い間父親に男尊女卑思考を刷り込まれていたのに考えを変えることができたミスターもすごいですが、それを受け入れたセリーもすごいと思いました。いつでも人は変われるよ、というメッセージを感じました。
刺さった!そして歌が秀逸!
スピルバーグ版もミュージカルも未鑑賞、ミュージカルのI'm here という曲だけは何度も聞いていて好きな曲だった。でもI'm beautiful とようやく言えるようになったシーリーの人生通した解放感、歌詞の意味は見てようやく分かった。今回も全編通してあの曲がクライマックスかな。
とにかく皆歌がうまい!ブラックミュージックの迫力、ハスキーボイス、どれもかっこよかった。
英語は発音が癖あってほぼ聞き取れなかったけど。
前半は胸糞展開なんだけど、歌が挟まるからあまり嫌な気持ちにならずに楽しめた。最後夫が許されるくだりは納得いかないが実際哀れに見えてしまい悔しい限り。
脱出時に夫から言われた、
“You're black, you’re poor, you’re ugly, and you’re a women.” だからお前は成功できるはずがない。
それに対して解放された時のI’m here で
「私には家がある、休める椅子がある、動く手がある、真実を見る目がある、心を見せられる親しい人がいる」
「そして何よりも自分のありのままの姿を認めることができている、そのことに感謝している」「私は美しい」
だから大丈夫、と自分を肯定できるようになる。
この曲の場面が一番こころに刺さった。
私は自信を持ってこれらがあると言えるだろうか。
家も手も目もある。心を見せられているかはわからないけど親しい人たちもいる。迫害もされてないし仕事もあって生きるのに困ってもいない。でも自分のことを愛することはきっとできていないし、いつかひとりぼっちになった時に自分の足で立てるのか、その強さをどうしたら身につけられるのか。ぐるぐると考えが回ってしまって胸が苦しくなる。見るタイミングが悪かったかな。心が弱っていたのかも。。
生きている
上質な王道ミュージカル
とにかく力強く伸びやかでエモーショナルな歌声と、心が弾むダンスで彩られるミュージカルシーンが最高。上映開始直後から始まる教会でのミュージカルパートで、本作への期待値がグングン上がりましたが、最後まで上質なミュージカル映画を楽しむことができました。
黒人女性であることで、当たり前に虐げられ、自由に生きる選択肢がなかった時代。セリー、シュグ、ソフィア3人の女性たちそれぞれが、互いに影響し合いながら絶望や希望を感じる様はとても印象的で、セリーが「生きている」と思えるに至ったシーンは胸に響きました。
やや長尺だったり、上手くいきすぎ(ラッキーすぎ)な展開が気になったりもしましたが、王道の上質ミュージカル映画として楽しめました。
歌詞の中に Gスポットが出るとわ (☆o☆)意外や意外。
平均的に
ミュージカルはさすがの素晴らしさだけど、ドラマの内容は相当につらいものがある一作
本作と同じアリス・ウォーカーの原作をスピルバーグは1985年に既に映画化しており、さらに本作の製作にも携わっているということで、逆光を活かした画面構成など、本作からは特に映像面で、スピルバーグの強い影響を感じ取ることができます。もっとも本作における陽光は明らかに、神の恩寵を意味しているため、スピルバーグ的撮影術の踏襲にとどまらず、作品の主題としっかりかみ合った映像となってます。
また本作は、主人公セリー(ファンテイジア・バリーノ)と歌手のシュグ(タラジ・P・ヘンソン)との関係性がより親密さを増しているなど、単なる前作リメイクではない変化を加えています。セリーを演じたバリーノは、ミュージカル版でも同じ役を演じていることを考えると、本作はスピルバーグ版のミュージカル映画化というよりも、ミュージカルの映画化、と言ったほうがより適切なのかも。
冒頭から素晴らしいミュージカル場面が展開しますが、ドラマパートもしっかりと描いていているため、鑑賞中は「ミュージカル映画」という認識はさほど持ちませんでした。
しかしそのドラマパートで展開する話の内容はなかなかきつい…。20世紀初頭以降の米国社会に生きる黒人の人々に焦点を当てているため、どうしても人種差別の問題が物語に絡んでくるんだけど、セリー達を直接的に苛む脅威は、白人による抑圧以上に実の父や夫らが振りかざす暴力的な父権主義です。
その抑圧に対してセリーやシュグらは立ち向かい、結末において一応の決着があるんだけど、それで彼女らが受けた受難の対価として十分なんだろうか…、と考えずにはいられませんでした。
なおこれまでの作品と比較してみると、シュグの人物造形や人間関係などの描写が異なっているようなので、それぞれ見比べてみるのも興味深いかも。
アメリカ版のおしん
私は生きている
スピルバーグ監督のオリジナル版は、冒頭からセリーが背負わされる過酷な運命が容赦なく突きつけられるので、観ていてとても心が重くなった。
その分、今回のミュージカル版は少しファンタジーの要素が入ったために、そこまで憂鬱な気分にはならなかった。
特に前半はセリーとネティー姉妹の絆が強く印象づけられる。
利発で垢抜けた妹のネティーとは対照的に、セリーは内気で頼りなく地味な存在だ。
しかし物語が進むうちにセリーが忍耐強く、慈悲深く、実はとても聡明な女性であることが分かってくる。
大まかな筋はオリジナル版と同じだが、ミュージカル版はより逆境に抗い、自立していく女性の強さにフォーカスが当てられた作品だと感じた。
ただ、ひとつひとつのシーンのドラマティックさではオリジナル版の方が勝っていると思った。
個人的にはとてもミュージカル向きの作品だと思っていたが、なぜか歌唱シーンもダンスナンバーもあまり印象に残らなかった。
キャラクターの魅力もオリジナル版に比べて乏しいとも感じた。
ただオリジナル版よりもセリーがありのままの自分を受け入れ、自分の生きる道を見出していくまでの過程がとても丁寧に描かれているのは良かった。
散々に醜いと言われ続けてきたセリーが、初めて自分に対して自分は美しいのだと認めるシーンは感動的だ。
そしてミスターのキャラクターも後半になって印象に残った。
ダニー・グローバーが演じたオリジナル版のミスターは、やはり非道い奴ではあるのだが、どこか不器用で憎めない部分もあった。
一方、こちらのコールマン・ドミンゴ演じるミスターはどこまでも冷血で擁護できる要素がひとつもない。
しかし、彼は自分が孤独になって初めて自分がセリーに対して行った仕打ちの残酷さを思い知る。
オリジナル版ではさらりとしか描かれなかったが、彼はセリーへの償いのためにネティーを呼び戻そうと働きかける。
ミスターがセリーの洋品店を訪れ、絶対似合わない派手なパンツを買うシーンも印象的だった。
改めてスピルバーグ監督の構成の上手さを実感させられはしたものの、今の時代に必要な要素を持った『カラー・パープル』であるとも感じた。
お父さん二人、旦那が嫌いすぎる
男尊女卑の時代に本人の意思もなく嫁ぎ、世話を焼く。
他の登場人物は自らの考えがあると歌い出すが、主人公は終盤になってやっと自らの歌を歌う。
自分のお父さんは本当のお父さんではないし、夫の父も古い考えで女性のことを貶す。そんな二人に人生を狂わされたと思うと苛立つ。そして旦那はあれだけ主人公に酷いことをしておきながら、侘びながらも主人公の職場に訪れるし、平然な顔して主人公の復活祭に参加する。主人公が許したことを表現したのだと思うけれど、もし自分だったら絶対許せない。
歌やダンスは圧巻だし、歌詞で気持ちを最大限表現していたのはとても素敵だった。
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