「圧倒的なパワーで歌い踊る黒人女性賛歌‼️」カラーパープル 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
圧倒的なパワーで歌い踊る黒人女性賛歌‼️
ミュージカル演出の勝利ですね。
1909年当時の少女時代から1947年までの40年間に渡り、
夫や男社会に虐げられ自由を奪われていた黒人女性が、
自己を肯定して自己を愛して生きる、までになる日々を
歌と踊りで描いています。
よく踊りと歌の背景になる風景が、
海辺で朽ちた大木が奇妙な形で倒れてたり、曲がりくねって立っていたりする
木が背景。
それは葉を落として枝が風圧で曲りくねっても、
折れずに死なずに存在している《女たち》を象徴するかのようです。
アリス・ウォカーの原作を1985年に映画化した
スティーブン・スピルバーグの映画はとても衝撃的な内容で、
私は一気に奈落へ落とされました。
まだ14歳で養父の子供を2度も出産したセリーは、
生まれたばかりの子供を、たった一日で引き離されて、
子供はどこかへ貰われていきます。
そしてやがてセリーは売り飛ばされるように横暴な男の元へ嫁ぎます。
この辺をマイルドにして、しかも歌い踊るパワフルな映像は、
1985年作品の重苦しくタブーに満ちた内容とはほど遠くて
とても前向きで観やすい内容となっています。
黒人女性たちの憧れとなるカリスマ歌姫のジュグ・ベイリー。
彼女は牧師の娘ながらゴスペルを拒否してブルースを選び
スター歌手になるのです。
そして一方の妹のネティ。
この映画はセリーとネティ姉妹の離れ離れにしてお互いを思い続ける
「母を探して何万里」みたいな内容。
《姉妹愛の物語なのです》
ネティは養父に迫られて逃げ出し、姉の元に身を寄せると今度は
姉の夫に寝床に入ってこられる・・・と女として苦難の連続。
しかしその運命を受け入れずに独立して行く強い女性です。
とても音楽も映像も美術も衣装も素晴らしいです。
ただ、白人がほとんど登場しないのです。
まるで黒人しかいないみたいに、黒人女性の敵は、黒人男性である
・・・みたいな偏向もやや不可解ですね。
元気の良いソフィーナが、メンフィス市長夫人(白人)に、
「メイドにならない?」と声をかけられて、
「真っ平ごめん!!」
と大暴れして獄中の人になる。
この部分が唯一白人との接点というか、差別を描いていました。
黒人による黒人のための自由と女性解放運動の映画!!
そんな感じも受けてしまいました。
ミュージカルは基本好きなんですが、あまりミュージカルに向いてないプロットというか、歌でスカッとするような問題じゃなく、理不尽な差別にムカつきながら、悲しみながら観たい作品でした。