「名作を「昔話」にしないためのアップグレード」カラーパープル TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
名作を「昔話」にしないためのアップグレード
名作のリメイクと聞けば、やはりオリジナルと比較してみたくなるものですが、私『カラーパープル』はまだ観られていない作品だったため、二日ほど前に予習として鑑賞してからこちらに挑んでみました。
前作・スピルバーグ版から38年経ったわけですが、比較して最近の映画は表現、描写また言葉遣いがマイルドになっていて、感情に訴えるような作品ほどやや肩透かしに感じて少々物足りなさを感じることがあります。特にスピルバーグ版では男たちのストレートで醜いまでの言動に腹立たしさを感じつつ観ていたこともあり、本作序盤のセリー&ネティの若き日のシーンについては「やはりオリジナルには敵わないか?」と思いつつ観ていました。ただ観終わって思い直せば、この物語を「昔話」として捉えてしまわれるよりもよっぽど良いのかな、と思い直しています。今もなお無くなることのない「セクシズム」に対して、世の男性は皆、多かれ少なかれ、無意識だったり直接的でなくとも、「自分も差別に加担していることはないか」と振り返るため、現代的に寄せることは決してマイナスではないと感じます。
とは言え、それぞれシーンを比較すればどちらが好みかはあるものです。私は個人的に「ネティがセリーに文字を教えるシーン」、これは後の手紙に繋げて感じたいところなので改変にちょっとガッカリ。また「シャグがセリーに歌を送るシーン」はその楽曲のアレンジも合わせてオリジナルの方が好きかな。一方、「ミス・ミリーとソフィアが絡むシーン」はいい改変で、その「事件」からのセリーとソフィアの関係性があるからこそ、シャグが戻っての食事シーン、セリーがミスターに強い表現で口答えをしたのをきっかけに「再覚醒」するソフィアには私、思わず落涙しそうになりました。
そして、知っているのにもかかわらず落涙必至のクライマックスシーン。今回、私の席の両隣共にご婦人だったのですが、お二人共に途中からポイントのシーン毎に鼻をすすられて泣いていらっしゃるご様子。当然この最高潮では涙腺崩壊しておられ、そこまで泣かれると私泣けませんがなと思ったり(苦笑)。でも、右隣のご婦人は物語終わって主要キャストのクレジット最中に退散、、あ、ほらここでタイトル出るのに。。
まぁ、なんだかんだ言ってトータル素晴らしい出来だと思います。セリーと彼女を取り巻く人たちの関係性が物語の推進力を生み、そして皆がセリーの本質にある強さに感化され、彼女を後押ししながら強く繋がっていく感じはまさに「アップグレードされている」と言える気がします。
96回アカデミー賞では私もお気に入りのソフィア役ダニエル・ブルックスが助演女優賞にノミネートされています。強豪揃いですが、1か月後の授賞式にまた楽しみが一つ増えました。応援しています!