「1985年版と両方見ると尚更いい!」カラーパープル ケンイチさんの映画レビュー(感想・評価)
1985年版と両方見ると尚更いい!
ミュージカル映画が大好きです。
2021年の『ウエスト・サイド・ストーリー』は久しぶりに生涯ベスト映画セレクションに加わりました。そして自分史上一番沢山映画館で見た映画です。だからスピルバーグのミュージカル映画なだけで大期待をしておりました。
スピルバーグの『カラーパープル』がミュージカル映画としてリメイクされると知ったのは割と最近のことです。あわてて1985年版『カラーパープル』を見ましたよ。
原作小説の時点で『カラーパープル』という作品は黒人差別、男女差別、DV、近親相姦、同性愛、貧富の格差、教育の格差、ルッキズム等々のテーマを取り扱い、人間の持つ毒素をすべて積み重ねたような境遇にある女性の人生を描いた壮大な一代記。
こんなトゲだらけの題材、普通なら凄惨なシーンが連続するエグ味たっぷりの映画になってしまいそうですが、それをおよそ40年も前に美しい人間讃歌として映画化したスピルバーグの苦労がうかがわれます。ただし当時は素直に評価されなかった傾向もあったようです。
でも85年版って名作ですよね。普通、人間から湧き出る毒素を何種類も上乗せして、何種類も掛け合わせているのに、鮮やかな映像、華やかな音楽で仕立てて、ミュージカルにしたくなるような映画に出来ます?
今回のミュージカル版を見て、私の中で85年版の評価上っちゃいました。
『ウエスト・サイド・ストーリー』の時も思ったんですが、元の作品とリメイク作品、どっちの方がいいとか劣ってるとかそういうんじゃなくて、どっちも凄く良い!
そして『カラーパープル』では両作が色々補い合ってて、85年版の分からなかった所が分かったり、ミュージカル版で端折っている所を85年版では鮮明に表現したりしていて、両方見ることで合点が行く所とか、ようやく納得がいったという所が色々とありました。両方見ると作品の理解がグンと深まります。
思えばそれは『ウエスト・サイド・ストーリー』もそうでした。スピルバーグのリメイクっていうのは、元ネタを決して蔑ろにせず、互いの価値を高め合うようになってて、何度でも繰り返して見たくなるような深みをもたらしますね。
凄く良かった〜。