「板チョコ」ウォンカとチョコレート工場のはじまり ストレンジラヴさんの映画レビュー(感想・評価)
板チョコ
「ステキなことはいつも夢から始まるの」
もともと観るつもりはなかったのだが、「翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜」で「チャーリーとチョコレート工場」(2005)のあからさまなパロディシーンがあったことからどうにも気になってしまい、観ることにした。他のスケジュールとの兼ね合いにより、公開から3週間遅れとなってしまったが、ようやく銀貨12枚を握り愛用の野球帽に夢をぎっしり詰めて劇場へ。※なお、チケットを買ったら銀貨は消えた。
開始早々「これは当たりだ」と感じた。ウィリー・ウォンカが実写化されるのは本作で3回目、多くの人にとってはジョニー・デップの強烈なイメージが残っていることと思うし、僕もそうだった。演じる側からすればジョニー・デップの幻影と闘いながら演じなければならないのは必至で、ティモシー・シャラメもしんどいよなぁなどと勝手に思っていた。だが観始めるとそんなことは杞憂でしかなかった。
予め言っておくと、本作はウィリー・ウォンカがチョコレート工場を開くまでの前日譚だが、ジョニー・デップ版と完全にリンクしているわけではない。歯科医の父は登場しないし、時代設定もジョニー・デップ版より遥か以前だ。そしてジョニー・デップ版ほどブラックユーモアな展開もない。まさにティモシー・シャラメをはじめ最高の仲間たちが「人は人、僕は僕」で自分にしかできないウォンカを見事に作り上げている。「君の名前で僕を読んで」(2017)で彗星の如く登場した当時、「ああ、ティモシー・シャラメは今後こういう"繊細な陰キャ"で売っていくんだろうな」と思っていた僕にとっては、これほど多才だったことが新鮮な驚きだった。
だがやっぱりテーマは一貫している。孤独のグルメもいいけれど、団欒の食事はいいもんだぞ、団欒の食事は楽しいぞといういつの時代も普遍のテーマがジーン・ワイルダー、ジョニー・デップ、そしてティモシー・シャラメを脈々と繋ぐ。この辺りは手堅く作られている気がした。つまり"いい作品だ"ってこと。
劇場を「僕の夢、僕の家」にしてくれたことに感謝を。ウィリー・ウォンカ、あんたが当代最高のチョコレート職人だ。
世界にチョコは数あれど、心お「どる」のはウォンカだけ…そうだろ、ヌードル?