「社会的弱者が事業主になるまで」ウォンカとチョコレート工場のはじまり movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
社会的弱者が事業主になるまで
俄然西川貴教似のジョニデが出てくると思いこんでいたので、端正な顔立ちの若者ウォンカにちょっぴり驚いたし、それ以上に、
ヒューグラント!!どうした?!
ローワンアトキンソン!
が1番の衝撃だった。
貧乏人はお金持ちから搾取される。
お金持ちは裏帳簿と裏チョコ(裏金)、
賄賂で揉み消しや汚職。
邪魔になる技術力のある他社は力で潰す。
他国にずかずか入り込みカカオを摘む。
小さな文字に騙される契約書。
識字は重要。
必要な末端に届かずその手前で搾取されていく。
社会の縮図やね。
子供の頃、ロアルドダールの本は群を抜いて面白くてほぼ全て読み漁ったが、こんなお話あったっけ?
マジックなのか魔法なのかよくわからない、
ウォンカの、あぶ入り、キリンのミルク入り、毛生え薬入りチョコレート。
花も籠も全て食べられるお店や工場。
カカオ豆4つからお店全体と売り物のチョコをそんなに生産できないやろ!
毛生えした消費者の訴訟は?
さっきまでチョコの貯水池で溺れそうになっていたのにどうして綺麗な服に戻っているの?
ツッコミだらけだがそこはファンタジー。
それでも、子供でも、
「自分で毛生え薬を盛ったのに、証拠を消そうとなんで飲むのかねぇ普通捨てるよねぇ」
とわかるあたり、現実的な理論性が育まれてきている子供達にまだ残る「夢」を消さずにわくわくさせるちょうど良い水準の脚本。
ウォンカもヌードルも物心つく前に父不在、母も幼少期に亡くしていて、「夢見ることから始まる」と母の言葉を忘れずにチョコレート店を目指すウォンカが、何の権力もないけれど、手作業クリーニング工場で奴隷扱い育ちの、そういう人生と諦めているみなしごヌードルに「絶望のあとの希望」を教えて守ろうとする。
子供にとってのチョコレート。
戦後ばら撒かれたチョコレート。
チョコレートはそのカカオからの成分や糖分も相まって、人にわかりやすく現実を忘れさせ、少しほっとさせてくれる。
ルンパランド=カカオ産地からすると、強奪だという視点も忘れて欲しくはないが、
汚職共から子供まで、みんなに求められるチョコレート。
そのチョコの魅力に、母子ふたりの船上生活で早々に気付いたウォンカだが、上質なチョコを貧乏人にも手の届く金額で売りたくはないチョコレート組合のチョコハイブランドの言い分もよくわかる。
原料を平和に確保できる範囲が望ましい。
カカオ農場が適正な労働となった時、日本人はチョコを口にできなくなる説、本当だろうなぁ。
世界一のチョコレートをお披露目する時、お母さんがきっとそばにいると信じて亡き母との夢を追うウォンカが、
味の秘密は何を入れるかではなく、「誰と分け合うか」。
に気が付いた。
貧富によらずチョコもお金も分け合えたら良いのに。
公認会計士、配管工、水中喋りコメディアン、電話交換手、みなしご、チョコ一筋のウォンカの6人で、汚職神父と修道士と経済界大物と貧民を劣悪雇用する雇用主を成敗する。
世界もそれぞれの専門性を本気で発揮したら、バチカンや児童売買者や戦争大好き資産家や汚職政治家達、作内で揶揄されている面々を成敗できるのかな?
難しいから大人も見ていてスカッとできる今作。
多幸感に満ちていたという批評を見たが、
「搾取される側から抜け出すには仕組みを熟知し、抜け穴から這い出す行動を起こさねばならない」
と学べる作品かなと私は思った。
子供は小説を読みたいと言い、すぐに買った。
どうぞどうぞ読んで楽しみながら、言わんとしている社会構図や不屈の気持ち、漢字でも、少しでも習得してください。この作品鑑賞の大きな成果。
ウィッシュやらパウパトやらやっているが、
この作品の隠さない現実味が好き。
私は地味に、ジョニデウォンカに出てくる、矯正歯科医お父さんの登場を楽しみにしていた。
無関係なのね!というか生い立ち変更されているのね!
お坊ちゃんジョニデウォンカと、川育ちウォンカは別者で、でもこの作品には川育ちウォンカだからこそ伝えられることが沢山ある。
圧倒的社会的弱者が夢を見て叶えて与える側になるまで。本当にやりたい事業まで、ルールを掻い潜り元手を稼ぐ時期。でも血の繋がりより、好きな事を突き詰める専門性と、類友で同様に勉強熱心な仲間それぞれの専門性があればなんとかなる。
ウォンカ工場が大きくなった時、ウォンカが来た時は、高級街でも放置されていた街の靴磨きの子など、そこに根付くリアルな生活水準にも雇用が生まれ豊かになったりするのかな?
でもウォンカ自身があの街では移民。
経済解決は難しい。