ふたつの部屋、ふたりの暮らしのレビュー・感想・評価
全3件を表示
愛は
事前に感想を聞いていた。
ある人に言わせればこれは、
「猟奇的なレズビアンのお婆さんの話」
だそうだ。
マイノリティが愛を求めて生き抜く姿勢は
マジョリティからすると"猟奇的"らしい。
やるせない。
これが若い異性愛者の映画なら純愛か?
ふざけんな。
でも確かに本作さ
とくに前半のホラーっぽい演出は
余計に感じるのよね。
無意味だし、第一おもしろくない。
なんなら悪趣味だよ
ストーリーの序盤で、
「レズの老人なんて、他人からしたらなんて事ない」とマドをなじるシーンがある。
実際に、ハプニングが起これば、
それはなんて事なくない話になる
身内からも、法律からも、彼女たちの存在は脅かされる。
それでも懸命に互いを探す姿は美しい
握る手と手に温度を感じた。
そして最後の時が来る。
二人は大きな選択の前に、
(というかおそらくは別れの前に)
20年間何度となく聴いてきた音楽と共にダンスを踊る
まるでそれが永遠に続くかのように
二人の愛の旅に終わりはない
久々に、ありがとうと言いたくなる映画だった
こういう作品があるから生きていけるのよ
【高齢女性カップルの密かな恋と引き裂かれながらも貫いた愛。剥き出しの愛が優しさにも狂気にも映る作品でもある。】
- 冒頭の二人の少女がかくれんぼをしているシーン。途中で一人が居なくなり、不気味なカラスの鳴き声が響く。この後のストーリー展開を暗喩している。-
◆感想
・アパートの向かい合う部屋に住むマドレーヌ(マルティーヌ・シュバリエ)とニナ(バルバラ・スコバ)は長年、密かにレズビアンとして関係性を築いて来た。マドレーヌは不幸な結婚生活を送って来たが、その夫が他界し、二人はイタリアヘ移住する計画を立てていたが・・
- マドレーヌを襲った脳卒中。マドレーヌの娘は介護士を雇う。マドレーヌは口も効けないのであるから。だが、ニナは介護士を追い出す為にあらゆる手段を駆使する。そして、再後半にその報いを受けるのである。-
・二人の愛に気づいていた娘が行ったマドレーヌを施設に入れると言う選択。
- マドレーヌの部屋に合鍵で頻繁に侵入するニナ。愛だとは言え、遣り過ぎではないかなあ、と思ってしまったよ。-
・マドレーヌを演じたフランスの大女優、マルティーヌ・シュバリエの"眼"だけで、喜怒哀楽を演じた姿は素晴らしかったなあ。
<ニナ、娘夫婦、介護士の各々の常識と非常識が交差するシーンは恐ろしくも切ない。ニナの剥き出しの強引な愛情が優しさにも狂気にも見える。マドレーヌが覚えていたニナの携帯電話の番号を病院から掛けるシーン。駆け付けたニナがマドレーヌを連れて戻った部屋は介護士の息子により、荒らされており、貯めていたお金も取られている。呆然てするニナの手を取ったマドレーヌは想い出の曲に合わせて、乱れた部屋の中で幸せそうな表情で踊る。二人に取って、幸せとは何だったのかを考えさせられた作品。>
続いてくれ
二人が暮らすアパートメントや、そこで作られる料理、飲まれるワイン、流れる音楽やダンス、散歩に出る湖畔の遊歩道、そういうものたちが素敵で、二人が何年にもわたっていい時間を過ごしてきたのが分かる。
それだけに、片方に脳卒中の発作が一度起きただけのことで、人生のパートナーなのに“赤の他人”扱いになってしまうのが本当に切ない。
「何か問題ある!? 年寄りのレズビアンで!」と往来で不動産屋相手に叫んでいたニナが、マドレーヌが倒れた後、マドの家族には隠し通そうとする(途中で思いあまって過激なぶちまけ方をするけど)のも愛ゆえだと思った。
マドを演じたマルティーヌ・シュヴァリエ、倒れて以降のシーンはほぼセリフがないのに、まなざし一つでたくさんのことを表していて、すごい女優さん。ビンゴの辺りから泣けてしょうがなかった。
マドの娘は、映画の中でヒールのような役回りではあるけど、母親が倒れる以前から母親を大事にしていたし、心の距離の近い母娘だということもうかがえたし、自分の両親の間に愛があったと信じたい気持ちも自然で、必死にドアを叩く姿はこれもまた切なかった。
最後、あのまま踊り終えて例えば二人で窓から身を投げたら、映画的にはキレイかもしれないけど、そうじゃなかったらいいなあ。誰にも邪魔されずに「Sul mio carro」で踊った後、二人にはドアを開けてほしい。そして、“ふたりの暮らし”を続けてほしい。部屋はふたつのままでも、誰はばかることなく行き来する新しい暮らしをしてほしい。
この映画が作られ公開されてすごくよかったけど、今度は恐怖や不安や悲しさと無縁の“年寄りのレズビアン”映画ができたらいいな。そういう意味でも、(あとに)続いて、という気持ち。
全3件を表示