「英国メイドの裏事情/避妊ペッサリー物語」帰らない日曜日 カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
英国メイドの裏事情/避妊ペッサリー物語
1924年の英国が舞台。上流階級のニブン家のお屋敷に勤める孤児院出身のメイドさんが長じて小説家になり、メイド時代を回想するストーリー。近世の階級社会をまだ色濃く残していた第一次世界大戦直後のイギリス。大多数の若い女性がメイドとして働いていたらしいことがうかがえます。マザーリング・サンデーとは使用人達が年に一回、半日だけ実家の親の元に帰れる休暇。母の日ですかね。えぇーっ、たった半日?と思いますよね。半日じゃ、行って帰ってこられない人もいっぱいいたでしょう。私の好きな落語の「藪入り」だって丸々1日は貰えるのにねって思いました。しかし、帰る家のないジェーン。
その超貴重な半日を別のお屋敷の御曹司との逢い引きに使う賢いメイドの隠密行動は私でも容易に理解できます。彼女が勤めるニブン家の旦那様は英国きっての紳士俳優コリン・ファース(英国王のスピーチ)。上流階級出身。奥様役はオリビア・コールマン(女王陛下のお気に入り、ファーザー)。長男、次男は戦死してしまい、今は夫婦二人だけ。
長兄二人が戦死して、ひとり残った三男坊を演ずるのはゴッズオウンカントリーで羊飼いの青年役のジョシュ・オコナー。弁護士を目指して勉強しているフリ。まだあどけなさの残る青年役。自分ちのメイドと街角で話していた新米メイドのジェーン・フェアチャイルド(オデッサ・ヤング)を街中で見かけ、即ナンパ。
もう子供はひとりだけになったシューリンガン家とホブディ家。お家断絶の危機。近隣の仲のよい親同士が結婚を前提に家族ぐるみのお付き合いをサポートするためのピクニックランチの日がまさにマザーリングサンデーだった。オデッサ・ヤング。はじめての関係でシーツに付いた破瓜の血が混じったお汁を嬉しそうに自分で洗います。ジョシューオコナーも悪びれた感じは微塵もありません。ヨーロッパのメイドとご主人様の間ではよくあることのようでもあります。コリン・ファースがジェーンを連れ、シューリンガン家の豪邸に向かい、現場検証しょうとするシーンは、自分にも昔経験があり、だいたい予想はできるけれども、自分のところのメイドが引き起こしたかもしれない両家の婚約消滅を静かに責めるようなシーンでもあったと思いますが、複雑な心境の演技が素晴らしかった。さすがオスカー俳優。出かける前にジェーンが水を飲んでからと言って、台所に戻り、水道で顔を洗いながらひとしきり泣いたあと、片足を椅子にあげ、月経カップのような形状のものに付いたものの臭いを嗅ぐシーンがとても気になって、眠気がぶっ飛びました。あの時代にあんな避妊具があったのか? 調べるとすぐ見っかりました。1910年から1930年ぐらいまでイギリスで使用されたゴム製の避妊用ペッサリー。当時はコンドームのようなものはまだ全然主流ではなかったようです。避妊具より性病予防の品物。男尊女卑の封建性が避妊具の歴史にも反映されていると感じたわけでございます。
私はメイド喫茶に行きたいと思ったことはありませんが、オデッサ・ヤングのメイド姿にはちょっと萌えました。それとは全く関係ありませんが、ちっともやらしくない中世の宗教画のようなエレガントな裸体。たくさんの蔵書の棚と裸のおしりのコントラスト。ジョシュ・オコナーの長いポール牧は私には別に~でしたが、鏡に写った彼の幻にははっとしました。彼が出て言った後のジェーンの書斎をうろつくシーンは自由そのもので、生まれた時、タイプライターをプレゼントされた時に次ぐ3つ目の体験としても見事な映像表現でした。私の好きな湖のシーンもありました。私は裸の湖のシーンがある映画が好きなんですw
ジェーンの10代から40才ぐらいを通して、とても自然な新星オデッサ・ヤングの起用は大当たり🎯
オリビア・コールマンの息子を失って呆然としたまま、両家の婚約を心から喜べない複雑な心境の母親の表情やジェーンに言ったあの言葉もすごく刺さりました。
ジェーン自身の産みの親ももしかして、ご主人様の子を身籠ったメイドだったかもしれません。母親のときには避妊具はなかったから。ポールの種はジェーンの畑に蒔かれて芽を出すことはありませんでした。しかし、ジェーンは物語という花を代わりに咲かせました。それを多くの人が時代を越えて反復体験することができます。芸術って素晴らしいです。
私のレビューも花を咲かせることはないにせよ、おこがましくも生きた証のひとつになればと思う昨今です。
風景や人物、衣装などの映像が美しく、重厚感のある映画でした。前半、ちょっと眠くなりましたが。渋谷のBunkamuraやイメージフォーラムで上映しておらないのがちょっと不思議な感じ。ジョシュ・オコナーの○○○がみられるのにね。
でも、付き合う男性がことごとく死んでしまうのは、魔性の女の証なんでしょうか?藤あや子みたいに。
こんばんは♫
蘭の花は、いつ出てくるのだろうと思ってましたが、洗面所のシーン、なるほど〜。避妊具。なんとか帽って言ってたモノですね。
そしてカール三世さん、藤あやこって!!笑わせてくれます〜
コメント、ありがとうございました。自分も自らの投稿レビューに追加補足したい時があります。私は原作を翻訳で読んで感心しました。この作家の他の作品を図書館で借りて、読もうと思っています。
こんにちは。そうですね。重厚でありつつ、私個人的には「わかりやすくて軽快」な作品に感じました。そうですねレビュー書く感覚。大いに共感です。歴史描写も巧みで人生を少し考えました。なんで、自分レビュー投稿してるのかなぁと。😊😊😊