「ラストシーンは主人公の背後には雲間に夕陽が覗いています まるで、お釈迦様の瞳のように自分には見えました」PLAN 75 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
ラストシーンは主人公の背後には雲間に夕陽が覗いています まるで、お釈迦様の瞳のように自分には見えました
PLAN 75
2022年公開
とにかくPLAN 75のディテールが素晴らしい
受付の説明資料やポスター、のぼりなどの宣伝資材、販促ビデオ
説明トークなどの様々な実在感に製作陣の努力が結実していて、本当にPLAN 75 が存在して既に運用されているかのような世界が、嘘っぽくなくごく自然に表現されていました
ただ、そこにエネルギーを使い過ぎたのか、脚本の練り込み不足は否めません
それで?と
物語が始まりそうなところで尻切れトンボで終わってしまうのです
50年昔のハリウッド映画「ソイレントグリーン」でも安楽死システムのお話が出てきていました
その作品ではその紹介だけで終わるのではなく、物語がそれを受けてそこから始まっていくのです
本作は、そのような娯楽作品では無いことは承知していますが、それでも、そこからどう物語が始まるのかを期待してしまいました
ベンチに手すりを取り付けるシーン
その手摺りは、お年寄りが立ち座りし易いようにするためのものではなく、ホームレスが公園のベンチをベッドにしないように排除するための仕組みだという告発でした
弱者の為のように見えて実は弱者排除の為のものだということです
かと言って、その手摺りの工夫が無ければ、ホームレスが公園のベンチを占有して、子供達やお年寄りが使えなくなってしまう現実もあるからそのような工夫が生まれ全国に広がったのも現実です
同様に、年寄りを働かせたら可哀想だという投書で解雇されるシーン
高齢者雇用を進めることが良い企業であったはずが、非難されてしまう現実
高齢者雇用が失われたら、当の高齢者がどうなるのかの現実も本作では紹介されます
物事には二面性どころか多面性があるのです
PLAN75もそうです
安楽死提供システムの恐ろしさは
その一面にしかすぎません
劇中で、PLAN 75 を自らの意志で申し込む主人公にとっては、どうだったのでしょうか?
難病に何年も苦しんで、治る見込みが無い人にとっては、生きている限り永遠の拷問が続く監獄に入れられているように苦しんでいる人によっては、救いの仕組みなのかも知れません
そうではない!
それでも生きたいという人ももちろんおられるでしょう
他人が判断できることではありません
かといって、本人がそのような意志を持っていてもそれを認めてはならないというのもそれはどうなのでしょうか?
答えはなく堂々巡りです
せめて、そこへ少しでも切り込んで物語をさらに前に進めて欲しかったと思いました
単なる安楽死の是非だけでない視点の広がりがあったのに活かせないままで終わってしまってもったいない限りです
それらの視点も物語に組み込んで作品メッセージにまで至っていたならば、恐ろしい程の傑作になっただろうと思うと残念で仕方ありませんでした
たかだか2時間程度の映画で取り扱えるテーマでは無いのかも知れません
だからこそ、そこまでには立ち入らないということも、ひとつの見識なのかも知れません
それこそ、こういうことは宗教が扱うべきテーマなのかも知れません
それぞれの信じる神仏がどう導いて下さるかです
ラストシーンは主人公の背後には雲間に夕陽が覗いています
まるで、お釈迦様の瞳のように自分には見えました
それがこの作品の結論だったのかも知れません