「コントラストから呼び起こされる思い」PLAN 75 sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
コントラストから呼び起こされる思い
観ている途中で気がついたが、この映画、至る所で、画面の真ん中に境目がくる構図が出てくる。単に監督の好みというわけではなさそうだなと思っているうちに、陰影と光のコントラストも様々な場面で使われる。
なるほど、一見そうは見えなくても、対比的に提示されたものから様々に感じ取って欲しいというのが、監督・脚本の早川千絵の目論見なのだろう。
心臓に疾患を抱え手術が必要な子どもと元気で健康な老人、地中海クルーズに行かれる者とスーパーのサバを贅沢と考える貧困層等々、あげ出せばキリがない。
考えてみれば、この世の中は対比に満ちている。そしてそれは、一人の個人の中にも存在する。
主人公だけではなく、plan75に関わる仕事をしている2人の若者たちも、その対比の矛盾と向き合い悩む。でもそれは、彼らは真っ当に生きているからこそだろう。
対して、この映画の中で、対比が隠され、矛盾がないように描かれているもの(老人殺しを正当化する者、謎の会社、plan75の対応のレクチャーをする指導員等々)の気持ち悪さといったら…。
細かく説明されていないが、これから主人公はどうするのだろう。一番隠されているのは、個人の意思を超えた、社会の事情。それと向き合って、彼女はどんな最後を迎えるのか。
そして、この映画を観ている自分自身も現実社会の中でどんな最後になるのか。
日常ではあまり考えずに生活をしている「自分自身の最後という問題」は、当たり前に、常にすぐ隣にあるということを思い知らされた。
倍賞千恵子がすごいのはさることながら、個人的には、河合優実がとてもよかった。
>この映画、至る所で、画面の真ん中に境目がくる構図が出てくる。
なるほど。気づかなかった。
もう一度注意してみてみます。
自然と印象付けられていたのか。すごい。
映画のストーリーが、突然プツリと終わりましたね。
それ故になおさら、自分の事として“課題”を渡された気がしました。
撮影のカメラマンも、確かに独特のセンスで、構図や色味、そして明暗を見せていました。思い出させて下さりありがとうございます。
監督がこのカメラマンを指名したんですねー。