劇場公開日 2022年6月17日

  • 予告編を見る

「ありえない? ありうる、のかも。」PLAN 75 ごーるどとまとさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ありえない? ありうる、のかも。

2022年7月14日
iPhoneアプリから投稿

カンヌ国際映画祭で新人監督賞の次点になった話題作。40代の女性である早川千絵監督の初めての長編映画。

75歳以上の高齢者に生死の選択を認めるプラン75という国の制度。このプランを選んだ人には使い道自由な10万円の給付金が支給されますー。
もちろんフィクションですが、現在の日本は“超高齢社会”であり、高齢「化」なんて甘いもんじゃない!おまけに少子化は進む一方。今、絶対見ておくべき作品だろうと鑑賞しました。

説明的な描写はほとんどなくて余白の多い演出。たとえばある人が亡くなるシーンでもその姿を近くからは撮影しない。引いた絵だけで語ってきます。
音楽もほぼ無しで淡々としているのに俳優の目、姿、声などから全てしっかりと伝わってきてまるでドキュメンタリーを見ているかのような感覚に。長編初メガフォンとは思えない監督の手腕に次回作への期待も高まります。

主人公のミチは78歳で一人暮らし。とてもきちんと丁寧に生活している人。そのミチを寅さんの妹さくらだった賠償千恵子さんが演じていて、あの可憐なさくらも今や深いシワがたくさん刻まれた高齢者なんだ、と。誰もが平等に歳をとっていくのだ、という現実を突きつけられます。
高齢を理由に解雇され、仕事が無くなると身寄りのない者は住むところも奪われる…

ずっしり。
何を感じるのか。何を考えるのか。
ラストシーンの意味も含めて、こちらにまっすぐ問いかけてくる作品です。

老後資金などございません。
さぁどうやって生きていきましょうかねぇ。

ごーるどとまと