劇場公開日 2022年6月17日

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「「老後」という概念が崩れた社会」PLAN 75 じーたらさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「老後」という概念が崩れた社会

2022年6月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

75歳以上になったら、自分で死を選べるという制度が導入された世界を描いた本作。
カンヌでも高く評価されており、初週から平日でもまあまあ入っている。劇場数も多くないからというのもあるが、より身近に感じる人も多く、かなり注目作であるのは間違いない。

本作は、静かに淡々と話が進んでいく。大衆向けとは言い難く、映像もセリフもかなり抽出している感じがする。倍賞千恵子さんの演技が秀逸で、ミチという女性の真っ直ぐさで純粋な様を表現している。

磯村勇斗演じる役所のPLAN75担当の岡部や、河合優実演じるコールセンターの成宮を通して、若年世代がこのプランを通して命をどう見るか、と言う点もシンプルによく描かれている。特にこの役所のPLAN75担当の岡部と、たかお鷹さん演じる叔父の関係性が、絶妙である。

マリア(ステファニー・アリアン)と言う役どころもまた近未来を想定したような設定で絶妙である。
娘の命を救うためにより収入の良いPLAN 75の最期の施設で働くことになるのだが、命を救うために、命の終わりの後始末をしているという立ち位置はなかなか巧妙である。

本作は、割と観る側に委ねられていると思う。映画を通して、我々は映画の世界を観ているのではなく、自然と自分とその家族を想像してしまう。多分、観た人全員そうだと思う。
あとは、「老後」という概念がもはや崩れている社会を描いている。70歳を越えても働かなければならない人たちが多くいて、自然と働く意志が芽生えている。ここに、社会の需要と供給のアンバランスが生じている点も描いている。

平均寿命が延び、人生100年時代なんて言われているが、それはもうデメリットの方が大きくなっている日本社会。それに対応する社会システムがあまりにも脆弱であることをこの作品を通して感じてしまう。

命の選択。見せかけだけは良く振舞ってるこの国ではそんな法案が到底通るとは思ってないが、我々は自然と自分の命の終わり時を選ぶ時がくるのではないかと思う。

1点だけちょっと雑だなと思った点は、コールセンターのマニュアルでは顧客とバれないから直接会うというのは100%不可能なので(振り込め詐欺のセンターとかならまだしも、政府から委託されてるようなセンターでは全部録音されている)、あそこはコールセンター業の専門家の意見を入れてほしかったかな。

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じーたら