劇場公開日 2022年6月17日

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「「生きているように生きる」ことの難しさ」PLAN 75 bionさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「生きているように生きる」ことの難しさ

2022年6月19日
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鑑賞方法:映画館

 圧倒的にすごいと涙が出てこない。『PLAN 75』はまさにそう。エンディングの夕焼けを見ていて、何をどこから消化していいのか分からない。

 「ただ生きている」ヒロムの叔父。生活は苦しいが「生きているように生きている」角谷ミチ。ともに75歳を超えていて新制度PLAN 75の対象者である。作中では、新制度の肝心なところは語られないが、登場人物の会話で積極的な安楽死制度であることがわかる。

 角谷ミチを演じる倍賞千恵子に関しては、褒め言葉が失礼にさえ感じる圧巻の演技。架空の物語ではなく、現実に存在する出来事として観客に問題を突きつける。

 角谷ミチとPLAN 75の民間委託先の担当者との最後の会話のシーンは、自分の記憶から消えることはないと思う。
 ミチは、人生の最後に心の通った交流ができたことへの感謝の気持ちを伝えることで、生きる未練を断ち切ろうとする。一方で、河合優実演じるオペレーターの成宮は、私的感情を押し殺して事務的に手続きを進めてはいるものの、ミチの心変わりを期待する気持ちが漏れ出てしまう。
 81歳の大ベテランと21歳の新鋭が、演技すら忘れて、ありのままに心の内をぶつけ合う。それくらい、2人とも役に入り込んでいる。

 現実問題で言えば、PLAN 75のターゲットになるような人々は、映画館に足を運ぶ余裕はない。公的助成を受けた作品であるならば、余裕のない高齢者に鑑賞券を配布すること検討してもらいたい。

 「生きているように生きる」ことが、人間の尊厳を確かなものにしてくれる。このことを教えてもらった気がする。

bion
momokichiさんのコメント
2022年9月20日

> 成宮は、私的感情を押し殺して事務的に手続きを進めてはいるものの、ミチの心変わりを期待する気持ちが漏れ出てしまう。

私もこのシーン感動しました。
直接的な台詞なしに、この想いを表現していましたね。

>「生きているように生きる」ことが、人間の尊厳を確かなものにしてくれる。
刺さりました。。

momokichi
talismanさんのコメント
2022年6月19日

bionさんのレビュー、心にしみ入りました。

talisman