「個人的にはPLAN80にして欲しいな。難しいテーマに取り組んだ早川監督の勇気には感服するが、着地点も難しいテーマだけに終盤がやや腰砕けになったのが残念。」PLAN 75 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
個人的にはPLAN80にして欲しいな。難しいテーマに取り組んだ早川監督の勇気には感服するが、着地点も難しいテーマだけに終盤がやや腰砕けになったのが残念。
①この映画のプロットを知った時に先ず頭に浮かんだのがマイケル・ヨーク主演でファラ・フォーセットも出ていた『2300年未来への旅(Logan’s Run)』(1976)という映画。あちらは30歳になったら否応なく死ななければならない未来社会の話だったが、このまま超高齢化が進むと2300年まで待たずにそうなるかも。中国関係の仕事をしているのでと思うんだけれども、かの国もあと数年もすれば日本の人口の何倍もの高齢者を抱えることになる。自分の国の心配をする前に他の国の心配をしても仕方ないけど、大変だろうなァとは思います。②この映画のテーマは個人の死生観・倫理観・年齢(死までの時間的距離)・生活環境・健康状態等によって千差万別の捉え方が有るだろうから正しい結論などないと思う。社会や国がそうせざるを得ない状況に追い込まれれば別だろうけど。日本だって歴史的に間引きや姥捨て山が平然とあったわけだから未来にはない、とは言いきれないだろうし。③終盤までは演出の流れも良く、このまま行けば★4つかと思ったが、終盤どこに着地させようか迷ったのかやや乱調になったので減点。ただ、もう少し生きてみようとミチに決心させたところは監督として一つの落とし処だとは理解できる。④フィリピンからの出稼ぎママが、5才の子供に心臓手術を受けさせる(生きてもらう)費用を稼ぐ為に、給料の良い「PLAN75」による死者の遺品整理の仕事を選ぶ、というのはなかなか皮肉な設定だと思った。⑤成宮が規則で禁止されているのにミチに会うところは組織人としては失格だが、「情が移って何が悪い」という監督のメッセージを伝える為に敢えて入れたエピソードかな。ミチとの最後の通話を終えた成宮のうしろで教育係らしい女性が“気持ちが揺らいだお年寄りを誘導するのがあなた達の役目”という恐ろしい事を言っていたし…中島みゆきの『帰省』という歌に“人は遠くなるほど物に見えてくる”という歌詞があるが、こういう事なんでしょうね。⑥で、以降は全て個人的な見解。還暦を過ぎたらイヤでも自分の死というか死にかたを考えざるを得なくなる。まあ、若いときから死については考えてきたので(だって、いつかは死ぬということを意識していないと充実した生は送れないと思うから)、ここに来て急に、というわけではないけれども、男性の平均寿命まであと桜を見れるのも20回くらいとなると自分の死が現実的なものとなってくる。⑦人生100年時代と言われるが100歳までは生きたくないな。顔や手足が皺皺になるまで生きたいとは思わない。80歳くらいで死ねたら一番良いと思うけど。ただ、人間は死ぬまでは生きるわけで、思う通りに死ねないのが現実(自殺は勘定に入れません)。そういう意味では私はこの制度にはもろ手を挙げて賛成とは言えないけれども反対ではない。家族のある人は違う考えだろうと十分理解できるけれども、将来的に一人で生きていくのが確実な身としては選択肢の一つとして有っても良いな、と思う。死後のことは国がやってくれるのは有り難いし(葬式も墓も要らないし)。ただ、75歳まではあと14年なのでせめて80歳にして欲しいけど。山あり 谷ありの人生だったけれど、今から振り返ると結構面白い人生だったし、若い頃は仕事や家庭の事情で出来なかったことも、今は退職金と時間が有るので出来るようになって、いま死んでも悔いはない境涯に成らせてもらっている。ただ、死んだ後で傑作といえる映画が作られたら、それが観れないのが唯一心残りだけど。⑧映画の中で、“この制度のお陰で1兆円規模の経済効果が出ているため(人の命の代償で1兆円!)、国としては65歳まで引き下げることを云々…”というニュースが流れるがトンでもないわ。でも、このまま日本国の赤字が増え続け国が傾きかけたらどうでしょう?⑨但し、本当にこんな制度が出来たとして、真っ先に利用する(せざるを得ない)のは、、独り暮らしの老人や、孤独死を待つだけの老人、医療費控除で何とか医者にかかっている病気の老人達で、いつまでも権力にしがみついている政治家や、議員年金と議員時代に貯めた金で悠々自適の暮らしをしている元議員、退職金をがっぽりもらった会社役員なんかはどこ吹く風、という社会になるんでしょうな。⑩で、最後にまた本作に戻って、恐らくこの人の主演でなければ物語に説得力が減じたと思う倍賞千恵子。妹の倍賞美津子も若い頃の妖艶さはどこへやら現在の邦画でも元気な老婆役で頑張っておられるが、姉の方は若い頃から“下町の太陽”の隣のお姉ちゃん役に始まって寅さんの妹のサクラへと、スター女優でありながら庶民的な役を演じ続けて来た人だけに、一庶民の老女役を演じて実に適役。しかも分別のあるしっかり者の役が多かったので、ここでも結局家族に頼ってしまったり(娘家族があるのに)孤独死を遂げてしまう老女仲間の中で自然とリーダー的な役割になってしまうと共に、将来への絶望(簾の奥の暗闇をじっと撮す事で日常の中の絶望感を巧みに表現)から一旦PLAN75を選ぶけれども、最後に思い止まって朝日を見つつ、この先だって仕事や住むところを考えれば決して明るい未来が待っているわけではないが、とにかく生きていれば何とかなるという決意がすんなりと受け入れられる。尚、カラオケのシーンで如何にもちょっと歌の上手い素人っぽく歌っているところは流石。
もーさん、コメントありがとうございます〜^ ^
私もホント、10代から変わっていなくてー(笑)
当時「大人だなぁ」と感じた人たちも、きっとみんな10代〜20代前半の自分を内面に抱えていたのでしょうね。
人に向かう時には外見ではなく、心を見なければ、とつくづく思うこの頃です。