「【”深刻な高年齢化社会に対し、哀しき警鐘を鳴らす作品。”早川千絵監督の作品制作の意図は、現代日本社会の不寛容な哀しき実態を、強烈な設定を敢えてする事で訴えかけているのだ、と思った作品。】」PLAN 75 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”深刻な高年齢化社会に対し、哀しき警鐘を鳴らす作品。”早川千絵監督の作品制作の意図は、現代日本社会の不寛容な哀しき実態を、強烈な設定を敢えてする事で訴えかけているのだ、と思った作品。】
ー 今作は社会に対するメッセージと共に、”自分の死の在り方を考える”作品である。ー
◆感想
・冒頭の青年が老人ホームを襲撃する強烈なシーン。そして、彼が自身の行動をモノローグで述べた言葉に、怒りが沸騰する。
ー ”日本の高度経済成長期を支えてきたのは、70代以上の方々だぞ!何だ、その不寛容で身勝手な思い違いの思想は!”-
・そして、高齢者を社会衰退の原因と捉えた殺傷事件多発を受け、政府が”PLAN75"という75歳を迎えた国民一人一人が自ら死を選択出来る制度を導入した事がTVで流れる。
そのニュースをやや哀し気な表情で聞くミチ(倍賞千恵子)。彼女も”PLAN75"に該当するのだな・・、と言う事が分かる。
・ミチはホテルの客室清掃の仕事をしているが、同じく高齢の仲間の女性が倒れたために、馘首される。
ー ホテル側の言い分は”高齢者を働かせて可哀想だ・・、という電話が入ったからという理由だが、”何を言っている。交通整理や、公共・民間施設のトイレ掃除(とても、尊崇な仕事だと思っている。)などは殆ど、高齢者の方々がやっているではないか”と再び、不寛容な社会に対し、イライラが募る。-
・そして、倒れた女性は自宅で独り孤独死しているのを、ミチが発見してしまう。
ー 仕事も中々見つからず、ミチは”PLAN75"に申し込みをし、加入者に配られる10万円を手にする。人生の総括の値段が10万円?しかも、”共同火葬”だと?ー
・心臓病の5歳の子供を母国フィリピンにおいて、出稼ぎに来ているマリア(ステファニー・アリアン)は政府直轄の”PLAN75"を運営する会社で働き始める。理由は時給がとても良いから・・。
ー 彼女ともう一人が行っている遺品整理のシーン。アウシュビッツのナチスを想起してしまった。”PLAN75"等という愚かしき制度は、何のことはない、民族粛清を行ったナチスの行為を通じるところがある事に、気づく。-
・ミチが、”PLAN75"のコールセンタースタッフの揺子(河合優実)にお願いして、一緒にボーリングに興じるシーン。
ー 良いのか?情が移るのではないか?違和感を感じたシーンである。-
・”PLAN75"の職員ヒロム(磯村勇斗)が20年振りに叔父(たかお鷹)と出会うシーン。叔父は音信不通であったが、身なりから推測するに零落しているようだ。
だが、叔父は誇らしげに言う”日本中の橋を作って来たんだぞ!”
ー この叔父も又、日本の高度経済成長期を支えてきた事が分かるシーンである。-
・そして、ミチと叔父は偶然”その日”を隣同士のベッドで迎える。
だが、ミチは自分で死に誘う呼吸機を外し、叔父はそのまま息を引き取る。
ー このシーンでのミチの心象が、もう少し分かればなあ・・。
一方、ヒロムは、叔父を”共同火葬”させまいと、叔父の遺骸を車に乗せ猛スピードで火葬場に向かうが・・。-
<ラスト、暮れ行く夕陽を眺めるミチの表情の解釈は、観る人によって違うだろうと思う。
私は、”自分の人生を”その時”が来るまで生きてみよう・・”ミチが思い返したように見えた作品である。>
■追記<2022.6.26>
拙レビューの中で、致命的な固有名詞ミスが幾つかあり、御指摘を受け修正しました。
ご寛恕願います。ドラムスコさん、有難うございました。
市の訪問ヘルパーは「情が移って問題が発生しないように」という規則らしく、定期的に担当者が変わります。トラブルを回避するためなのでしょうが、僕が介護職をしていたときに考えさせられた光景でした。
おはようございます。
とにかく様々考えさせられると言うか、しばらく陰鬱な気持ちになる作品でした。私の母は有り難くも91でまだ日々元気に仕事をしていますが、その日 まで働いて電池切れのように逝けたらと考えていると思います。俗に言うピンピンころり。この作品はそこを否定してる点が間違いなのかなあと今気づいた次第です。働くことは生きる意欲です。75以上まで働けるならその方が絶対にいいんだと私は母を見てるとそう思います。
本作、男はつらいよ、家族などで、懸命に生きていく昭和女性を演じてきた倍賞千恵子を主役に起用したことが奏功していたと思います。
主人公と倍賞千恵子が演じてきた昭和女性が繋がっていると感じました。
ラストシーンの夕日に向かって主人公が歌を歌うシーンに作品メッセージが凝縮されていると感じました。
私は、最期まで生き切るのが、生きることだと思います。
-以上-
大台と言われて直ぐにピンときませんでしたが、もしかして!?と思い久々にPCサイトをみたら自分でもびっくり!!
配信やDVDで観たものを書いたらキリがないので手を出していないだけなんですけどね(汗)…実は劇場公開されずDVDで観た作品が2作あるのはここだけの話ですw
ていうか、NOBUさんももう少しじゃないですか!
金盃は遙か彼方で背中もどんどんみえなくなっていきますけど。kossyさんは凄すぎますね。