「余白多いが、全世界に一石を投じた映画」PLAN 75 ドロシーJさんの映画レビュー(感想・評価)
余白多いが、全世界に一石を投じた映画
カンヌ国際映画祭凱旋プレミア試写会で鑑賞。ご招待いただきありがとうございました。
背景説明をそぎ落としたシンプルなストーリー運び。ドキュメンタリーのようなリアルな映像。監督がおっしゃるように、余白たっぷりの映画だった。
設定は近未来。街の様子や人々の生活は現在と同じだが、社会や制度は激変しているようだ。PLAN75も新たに導入された制度。
余白が多いので想像するしかないのだが、75歳以上の高齢者であっても自分で身の回りのことができる人に生死の選択を迫るということは、寝たきりで意思表明ができない人の選択はどうなっていたのだろう。この映画では割愛されていた部分だが、個人的には最も気になったところである。現実的には、PLAN75導入の前に取り組むべき課題と思う。
いずれにしろ、高齢化は日本だけでなく欧州、アジアなど全世界的に進んでいる。全世界に一石を投じた映画だ。これから海外で公開が続けばより注目されるだろう。
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ヒロム(磯村くん)、瑤子(河合さん)とマリア(アリアンさん)は、PLAN75に関わるそれぞれの業務を日々粛々と遂行する一方、心のどこかでは引っ掛かりがあるようにも見えた。そう思わせる演技だった。
磯村君演じるヒロムの微妙な表情。ヒロムの場合、叔父との再会でその違和感が顕在化する。河合さん演ずる瑤子はミチと会うことで。河合さんの電話の声がいい。機械的だけど優しい。会いたくなる。
アリアンさん演ずるマリアは・・・(ネタバレになるので控えます)。
しかし、最後にミチと若者らは自分の感受性に目覚めて(茨木のり子さんの詩にあるように)行動を起こす。人間が自分の感受性を信じて行動したらPLAN75は阻止できると感じた。
キャストは倍賞千恵子さんはじめベテランも若手もみな素晴らしい。たかお鷹さん、大方緋紗子さんの演技は、演技を超えたリアルさ。たかおさん演じる叔父がヒロムと別れるときのバイバイがたまらなく心にしみる。他のベテランの皆さんも見事。舞台俳優の方々でしょうか。倍賞さんはアカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞できるのでは。
マリアを通して、外国人出稼ぎ者やフィリピン人社会が描かれていたのは、この映画にフィリピン資本が入っていたからかもしれないが、日本の一面を海外に発信できたと思う。