生きててよかったのレビュー・感想・評価
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アクション映画じゃない
独りで生きてるの?
私たちはいかに生きるべきか
海の向こうでは戦争が行われている日々ですが、今の日本で若者たちが生きていくには、何を拠りどころとしたら生きていると実感を持って、誇りが持てる生き方ができるのかということを若い映像作家の視点から描いた物語だというように私には思えました。
メインキャストは誰もが自分に自信が持てず、かといって別に普通に生きていれば生活に困ることもない人ばかりなのですが、人生において何事かをなしとげたいという焦りを、自分を傷つけるという刺激によって得ようともがいているように私には見えました。
とはいえ主人公は格闘技の選手なので、リアルさがないと説得力が伝わらないですが木幡竜さんは完ぺきに演じきっていたと思います。腹筋が割れ贅肉も全くなく、まるで仮面ライダーのソフビ人形みたいだと思って観てました。
今の時代に蔓延した沈鬱な自由というか先の見えない虚無感を若い日本の作家が表現しようとするとこうなるのかと面白かったです。
生きるよすが
プロボクサーという経歴を持ち、中国を拠点に活躍する俳優の木幡竜さんがボクサーとして戦うことでしか生きられない中年男を演じる本作を観ていると、ボカロPのユリイ・カノンさんによる音楽プロジェクト「月詠み」の「生きるよすが」という曲の歌詞が思い浮かんでしまう。
この楽曲の「どうか こんな命に 明日を生きる理由をくれよ」とか、「わからない 才も人生もわかるものか 嘘だらけでも」という歌詞が本作の主人公・楠木創太の姿にオーバーラップしていく。
この作品には創太同様に「生きるよすが」にすがる人物たちが登場する。
共に創太の幼馴染で、一人は彼の恋人にして後に結婚する幸子であり、もう一人は親友である松岡健児で、それぞれ創太と共に歩む人生や俳優として売れることを夢見て、それを「よすが」に日々過ごしている。
だが、「生きるよすが」の歌詞「全てがそりゃ報われるものじゃない 時間も金も無駄になるかもな」にあるように、いくら努力しても夢が報われる訳ではない。
「それでも、 生きろ」という歌詞ではないが、創太は心身共にボロボロになりながらも闘いの世界に「生きるよすが」を見出してがむしゃらになっていく。
長く続くコロナ禍、そして何時終わるとも知れない海の向こうの戦争、そういった明日を知れぬ閉塞感の中で、本作は「生きるよすが」を見出して突き進む男の姿を通して、下を向きがちな我々にエールを送っているような気がする。
魅力的
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