「事実と観念の不可分さ」去年マリエンバートで abokado0329さんの映画レビュー(感想・評価)
事実と観念の不可分さ
アラン・レネ監督、アラン・ロブ=グリエ脚本作品。
映画史において決定的に重要な作品であることを岩崎昶の『現代映画芸術』で知る。もう45年ぐらい前の本だから、現代でもないがみるべき作品ではある。しかしドライヤー同様、あんまり感覚に合わないな…
映像イメージと音声イメージで語られることは当たり前のように同期するわけではないし、ナレーションや回想が真実であるわけでも決してない。そして去年のことが事実としてのイメージか、登場人物の観念としてのイメージかも、監督と脚本家で意見が違うし、観客の解釈ももちろん分かれる。
映画において人物がどんなバックグラウンドをもった誰なのかも、劇的な展開もドラマもなく、石像化するブルジョワジーの社交を撮っただけで、またそのイメージの時制の整合性や因果を排し、イメージを繋げただけで映画として成立することを示したのだから重要な作品ではある。もちろん私が模倣できるわけではなく、そこにはある種の作劇があって全く雑ではなく、舞台装置の宮殿のきらびやかさや衣装の凄みはある。ショットの配置もモンタージュも周到に計算されている。しかしその奇天烈さだけをやったのではとも思ってしまう。ブルジョワジーの秘かな愉しみ。私には残念ながら、ブルジョワジーの享楽に耽る暇はない。
コメントする