「謎は謎のままという魅力、魔力」去年マリエンバートで らいかんすさんの映画レビュー(感想・評価)
謎は謎のままという魅力、魔力
E.jongの小説に出てきて、興味本位で見た映画です。これを観ないと小説のほうの中身が理解できないような気がして。が、結果として忘れられない映画になりました。
あらすじもネタバレも解説も、何度も読み込んでから観ました。
でも、正解はこれ、と自信を持って言える解釈にたどり着いたかというと…
ストーリーは、ものすごく大ざっぱにまとめると、Xが、人妻のAに迫って、夫のMが傍観者…というものです。
で、XとAの記憶?は妄想で、Mの記憶だけが事実…なのですが、それ(と、現在のできごと)がシャッフルされていて、まさに客観的な事実は観客にはそうそう分からない仕掛けになっています。
そして、モノクロ映像なのにというか、むしろモノクロだからなのか、影が、庭が、衣装がとにかく美しい。何の暗喩なのか異常に長い影(だいぶ怖い)。計算され尽くしたような庭。もっと人工物であるはずの衣装よりもさらに人工的に見える庭。
衣装が謎ときの鍵になっている(衣装で時系列や誰の記憶かわかる)んですが、衣装はシャネルらしいです。途中、Aが真っ黒なファーが袖口についた衣装で安楽椅子にもたれ、甘い口調のフランス語で「およしになって」みたいなことを言うシーンがあります。少し俗で、相手にむけた媚やふくみがあって、謎めいてもいて、ぐっと惹き込まれました。
楽しいわけでも、悲しいわけでもないし、感動するかというと、それも少しずれた感想になりますが。謎、人工美、抑えつけられた官能、そしてスノッブな一面…そういうものが混ざり合って、妖しい毒のように出来上がった映画だと思います。
カラーにリマスターされたんですっけ?見たいような、見たくないような。もし、見る機会があれば、考えるのを放棄して観ようかな。