劇場公開日 2019年10月25日

「記憶と意識の狭間の混沌に溺れさす映画の流麗にして鋭角的なモンタージュ」去年マリエンバートで Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0記憶と意識の狭間の混沌に溺れさす映画の流麗にして鋭角的なモンタージュ

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、映画館

約10年振りの再見。フィルムセンターでの初見は睡魔に襲われて、夢と現実と映画が渾然とした脳内カオスに陥って、その混沌のまま劇場を後にした。映画館で寝てしまうことに罪悪感を持つ身としては数少ない屈辱の経験になる。

ラストの真っ白いモンタージュが記憶の閃きのようにこころに残る。
この不条理なシナリオで約90分の映像作品に仕上げる演出の拘りは、やはり素晴らしい。
デリフィーヌ・セリングに出会えただけでも嬉しい。
ストップモーションの多用。同じナレーションの反復。男と女の銅像に対する拘り。
男と女の記憶のすれ違いにも拘らず、今その空間と時間を共有するアンバランスな関係。
室内と屋外のカットバックに見る映像空間の広がり。
全てにおいて映画に対するレネ監督の挑戦と実験。
映像の断片を観客が再構築しないと理解できない作家の独壇場。
記憶と現在の存在意識の乖離に真実はあるのか。
  1998年  8月26日

アラン・レネ監督は、最初の長編劇映画「二十四時間の情事」の1959年から亡くなる2014年まで長きに渡って作品を発表した、創作能力旺盛な映画監督でした。後期の作品群は全く鑑賞の機会を得ることなく時が過ぎてしまったけれど、若い時に受けた感動の記憶は鮮明です。個人的に感動した作品を順に並べると、
「ミュリエル」
「戦争は終わった」
「去年マリエンバートで」
「プロビデンス」
「二十四時間の情事」
「薔薇のスタビスキー」
「夜と霧」
特に「ミュリエル」と「戦争は終わった」は素晴らしい。

Gustav