「鼻から牛乳」苦い涙 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
鼻から牛乳
そんなシーンは今作には一つもないのだが、自分が知っている元ネタが嘉門達夫だったもので、そこから、『トッカータとフーガニ短調』 (バッハ)→ザ・ウォーカー・ブラザーズ/孤独の太陽In My Room という流れに落ち着いた劇判である そこからの派生で宇宙戦艦ヤマト白色彗星のテーマのパイプオルガンまで行着いたことは蛇足(苦笑
フランス映画らしい皮肉とウィットに富んだ作品という括りで良いのだと思うのだが、現代の重層的作調よりも薄さが垣間見れてしまう内容である というのもリメイク作品と言うことなので致し方ない部分も甘受せざるを得ないストーリーである
主人公の監督の自宅から略出ていかないロケーションの撮影である このことから演劇用に設えているのではないかと思うコンセプトなのでは?
そもそも映画監督という職業のキャリアステップ自体、さっぱり想像出来ない、或る意味偶然の賜物のような地位に鎮座している男の、だからこそのエゴイズム溢れる印象に仕上がった作風である
才能、努力、タイミング、その全てを掠め取った者のみが得られる称号としての"映画監督"なのだが、しかしそれ故の犠牲を埋め合わすかのような愛情 それは愛という名の肉欲かも知れないし、神に近づく敬意かもしれない 兎に角、ジューサーミキサーに全部ぶち込んで混合する"スムージー"のような理念に取憑かれた、太っただらしない男の生き様をアイロニーたっぷりに描いてみせた作品と言うことで良いのでないだろうか・・・
"愛"という幻想を、欲望や敬服、自尊心や卑下、そして勝手な妄想と拠所と、人はホントに自分勝手に構築し、そしてそれを具現化可能な社会的地位に創られた舞台なのだろうと、ゲンナリする現実を描いた完成形である
奴隷のように扱った助手に唾を吐きかけられても、でもまるで中東の彫りの深いハンサムな男に完成された芸術美に魅せられるラストシーンも又、情けない羞恥たっぷりに切り取った作風に、外連味込みの毒々しさを感じた意欲作と心を抉られたのである