劇場公開日 2024年12月13日

「自営業者(小作人)は、つらいよ」太陽と桃の歌 YAS!さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0自営業者(小作人)は、つらいよ

2024年12月30日
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鑑賞方法:映画館

桃農家における"感動のドキュメンタリー映画"だと思って、映画を観ましたが。。。

原題は「Alcarras」で、単に監督の故郷である町の名前らしい。
監督はドキュメンタリー風映画として、この作品を撮影している中で、鑑賞者に映画を通して、田舎町の現状を観てもらい、何かを考えて欲しいと願ったに違いないが。。。
映画には、この地での特殊性がなく、舞台が日本でも同じような事が せっかく当てはまるのだが
それを日本の配給会社は"ヒューマンドラマ"の如く、宣伝してしまっているので、
映画自体の趣旨を失いかけてしまっているが、このテーマを描くのが30年前なら良かったが
今更 問題定義されても、社会派映画としての新鮮度はない。
また、監督の言いたい主張がない事も、映画の質を落としている。

この映画の舞台となる農家は、桃農園ではなく、いちじく農家でもなく!
メインは、出稼ぎ労働者を使ってまで収穫する"オリーブ農家"であって、いちじくや桃は連産品でしかありません。

カタルーニャ地方の名産は、桃ではなく
あくまで映画冒頭のオリーブであるが故
農協にいた他農家もみな"オリーブ農家"です。
この映画の中で語られている 色や大きさ等の作物は桃ではなく、オリーブの事を言っています。

そのオリーブの収穫期である3月頃から9月までの収穫の"打ち上げ"としての 町の祭り があり
桃は、その年の"最後の締めの収穫物"という位置づけがあるだけなのですが、
その意味を映画では、きちんと説明ができていないので、
イタリア人以外の人間が、この映画の内容をまるで理解できないのは、この監督の力不足と言えよう。
また、地中海性気候であっても、2月から 真夏を過ぎ、秋になるまでの季節感が まるでなく
いかにも「1月間で撮影しました」という演出も、最低レベルだ。

ちなみに、乱雑に扱うオリーブの15ユーロセントは、25円/個です。
あの乱暴な扱い方では、ジュースにしかできません。
ちゃんと農業すれば、食用として売れて、30ユーロセントの単価には成るでしょう。
そういう意味では、邦画「奇跡のリンゴ(2013年)」「種まく旅人(2012年)」をこの映画のダメな主人公に見せてあげたい。

映画の内容からすると、50年前ではなく、パソコンもインターネットも、携帯電話もある現代なのに
社会から取り残されているのは、主人公だけでなく、監督自身も時代の流れを感じていない お花畑に住む人なのでしょう。
私見としては、このようなダメ農家には、行政指導が必要なのと同時に
農業高等教育を農園経営者子息には受けさせる必要があると思う。

この映画を観たら、「プレイス・イン・ザ・ハート(1984年)」を観て、
僕が今回期待した"ヒューマンドラマとしての農家"を味わってもらいたい。

YAS!
あんちゃんさんのコメント
2024年12月31日

なるほど。収穫祭の背景や趣旨に触れられておらずあたかも学園祭のような感じであること、収穫物である桃の取り扱いがぞんざいであること、農作物の卸値の引き上げを求めるデモが唐突に挿入されること、いずれも違和感がありました。これは池に足がついていない駄目な農家の話なんですね。

あんちゃん
talismanさんのコメント
2024年12月31日

「奇跡のリンゴ」は見ました。無農薬がこんなに大変とは!と。「桃」の映画でもお父さんは有機農業であることに誇りを持ってること言ってた記憶ありました。

talisman
talismanさんのコメント
2024年12月31日

オリーブなんですか!何も知らず。ベルリン映画祭で金熊賞とったということもあり楽しみに見ました(桃の扱いが雑だと思いました。でも日本が丁寧過ぎるのかなとも思いました)。審査員の詳細は知りませんが、スペイン、イタリア以外の国の人達は農業のことを知らないということになるんですね。レビュー拝読できてありがとうございます。

talisman