「ハァ…」ハウ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ハァ…
『“それ”がいる森』は予告と中身が違って詐欺レベルだが(まあ噂には聞いていたけど)、こちらは予告通り。
可愛いワンちゃん、好感度と人気の高い田中圭、犬と人の交流をハートフルと涙・涙・涙で描く。
『南極物語』『ハチ公物語』『クイール』『マリと子犬の物語』など日本映画にはワンちゃんの大ヒット作が多く、例に漏れず昨夏大ヒット!
…の筈だった。
週末興行ランキングで初登場TOP10にも入らず。
それどころか、皆大好き泣けるワンちゃん映画でありながら、酷評の声が多く…。
実はあざとく泣け!泣け!推しの予告編ですでに辟易してたんだけど、実際見てみないと。どんなものか見てみた。
一言で言うと、“ハウ”ではなく“ハァ…”。まあ酷評意見に異論は無いかなぁ…。
恋人にフラれ、婚約も解消された気弱な市役所職員の民夫。
見かねた上司から勧められ、捨てられ保護されている一匹の白い大型犬を飼う事に。
声帯を除去され、“ワン”と鳴けず“ハウ”と鳴くこの犬を“ハウ”と名付け、元気いっぱいに振り回されながらも、たっぷりの愛情を注ぎ、欠けがえのない存在になっていく。
ところがある日、ちょっとした事からハウが居なくなってしまう…。
東京から遠く離れた青森に辿り着いたハウ。
南下。様々な人と出会いながら。
民夫の元に帰ろうとする…。
…と聞くとストレートに泣ける良作ワンちゃん映画のようだが、本作、ただ単に一本の映画としてつまらない。
各エピソードも引き込まれるものや心満たされるものも無く、あまりにも単調。
また、いまいち必要性も感じない。民夫と離れ離れになった後、各地で会った人々。ある女子中学生、ある老女、ある修道院…。ハウと出会って心癒されていく…みたいだが、何だか実際はさほどハウが主軸となって活かされてない気がした。
特に修道院エピソードはある意味衝撃。元の飼い主と再会するも、DV元カレが現れて切り付け事件…! これ、家族で楽しめるワンちゃん映画じゃなかったの…?
何か思ってた以上に暗いエピソードや重たいエピソードあり。もっとベタに泣けてハートフルになれる作品かと思ったら…。
犬好きの方々から集中砲火されているラスト。まあ、確かにね。
遂に民夫の元に帰ってきた。しかしその時、ハウは別の飼い主に飼われていた。新たに名前も付けられて。それを知った民夫は愛犬を譲る…。
民夫にしてみればやっと再会出来たのに手離さなければならない。
ハウにしてみればやっと帰ってきたのにもう一緒に暮らせない。
感動の再会に非ず。悲しい別れ。
これ、誰得…? 誰目線…?
そもそも離れ離れになった時、リードを付けていなかったのも悪い。
私ゃ犬を飼った事無いが、家族のように大事なら、居なくならないように注意すべき。
最後は悲しい別れになるけど、民夫の優しさと変わらぬハウへの愛情で感動誘うが、何か違うんだよなぁ…。
多くの方々が指摘されてる通り。犬は単なるペットじゃなく、家族。その家族に対しての扱いがお粗末。
犬好きの方々が非難の声を上げるのも無理はない。
思えば民夫の言動は最初から。恋人にフラれ、メソメソナヨナヨ。自分から幸せを手離す。
ハウの時もそうだ。本当にハウが大事なら、もっと手離したくない意思を見せて然るべきだ。
終始民夫の性格にイライラ。犬を飼うには責任感が必要らしいが、民夫にはそれを感じられなかった。
民夫はハウと別れたけど、同僚女性と何だかいい感じになったっぽく…って、それでいいんかい! 尚更ハウが不憫…。
ハウの可愛さには異論ナシ。唯一の取り柄はそこのみ。ハウが可愛いだけに非常に勿体ない。
きっと多くの方々は、ハウに癒され、素直に感動出来る作品を見たかったに違いない。
『“それ”がいる森』もビミョーだったけど、あちらはツッコミ所がある意味面白かったけど、こちらは…。好きになれる点が無かった。
製作側は本当に犬好きなのか!?…って辛口意見もある。
原作/脚本の真意は知らぬが、監督。名前に“犬”が入っているが、猫題材の作品の方が多いし…。