「冴えない30歳過ぎの市役所職員・赤西民夫(田中圭)。 婚約者にあっ...」ハウ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
冴えない30歳過ぎの市役所職員・赤西民夫(田中圭)。 婚約者にあっ...
冴えない30歳過ぎの市役所職員・赤西民夫(田中圭)。
婚約者にあっさりフラれ、冴えない日々は更に冴えない日々に。
そんな彼を見かねたかどうか、上司は民夫に保護犬の飼い主になることを勧めた。
民夫が飼うことになったのは、白い大型犬。
前飼い主のせいで声帯切除をされた犬は「ワン」とは鳴けず、「ハウ」という声しか出せない。
ハウと名付けられた犬のおかげで日々の張り合いを取り戻した民夫だったが、ひょんなことからハウが行方不明になってしまう・・・
といったところからはじまる物語で、おおよそ『名犬ラッシー 家路』の類だろうなぁと高をくくっての鑑賞でした。
が、映画の眼目は飼い犬と飼い主の友情譚ではなく、家路を目指すハウが出遭う現在の日本の状況を描くところにありました。
全部で3つのエピソードが綴られるのですが、
ひとつめは、東日本大震災で被災した福島県から避難してきた少女の物語。
友だちのいない少女の背景にあるものは、日本における無意識バイアス(端的言えば差別意識)。
このエピソードでは、犬童一心監督の初期作品『二人が喋ってる。』を思い出しました。
ふたつめは、住人が少なくなった地方都市で、古くから傘屋を営む老女の物語。
東京一極化で、寂れていった地方の一面を描いています。
みっつめは、DV夫から逃げ出した妻の物語。
教会に保護を求め、どうにか生きていけるかと思えた矢先、DV夫が登場し、修羅場になってしまいます。
やや演出過剰な面はありますが、虐げられている女性を短い尺で描いています。
このDV夫が、ハウの声帯切除手術をさせた、というのは、少々エピソード的には盛りすぎかなぁ。
で、最後の最後は、お約束どおり、ハウは民夫のもとへ戻ってくるのですが、そこにもひとヒネリ。
単純なハッピーエンドでなく、母子家庭という現代社会を挟んでいるのがいいです。
ということで、いい意味で予想を裏切るいい映画でした。