「ハッピーエンドじゃないの?」ハウ 錫龍さんの映画レビュー(感想・評価)
ハッピーエンドじゃないの?
いきなり婚約破棄から始まった。婚約破棄って言っても、結婚式を控え、戸建の新居も購入してからでは地獄である。それなのに、婚約者に対する怒りをウチに閉じ込めてしまう気弱な赤西民夫を演じている田中圭。民夫は心優しい市役所職員でどこか情けない気弱な性格をしていて自信が持てない男だ。
しかし、田中圭さんって気弱な人を演じさせたら右に出るものはいない、と思う。
飼い主に捨てられて保護犬になっていた真っ白な大型犬を飼うことになった民夫は人懐っこいこの犬をハウと名付け、民夫とハウが次第に絆を深めていった。
ハウという名はなぜか?
「それは観ていればわかります」という石田ゆり子のナレーションが心地良い。
突然ハウが姿を消してしまい、必死にハウを捜す民夫。人生最悪の日は婚約者にフラれた日ではなく、この日だった。偶然のアクシデントが重なってハウは遠く離れた青森の地にいた。そこから民夫の待つ横浜まで798キロの道のりを目指す。
ハウは、悲しい表情をしている人に寄り添いながら、1年かけて民夫の元に戻るのだが、民夫と再会できたその日が、本当のお別れとなるストーリーが切なくて悲しい。
思っていることがうまく言えない民夫と、うまく吠えることができないハウ。二人(人間と犬だけど)は、共に優しく、似ていることに気づいたのは最後でした。劇中は泣けなかったのにエンドロールが終わって、身支度を整えながら涙をぬぐっていました。
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