劇場公開日 2022年5月6日

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「どれも中途半端なのに心に響いてしまった」マイ・ニューヨーク・ダイアリー kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5どれも中途半端なのに心に響いてしまった

2022年6月9日
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鑑賞方法:映画館

「ライ麦畑でつかまえて」ってものすごく影響力のある小説だと思う。色んな物語で話題に上がるし、影響を受けたって人も何人もいる。周りにもいたいた。20代のときにライ麦好きなやつらの熱さにほだされて読んでみたが、全く共感できず失望した思い出がある。いや、10代のときに読んでいたら違ったのかも?なんて思ったが、そうじゃないのだろう。単純に自分には合わなかったってことだ。でも、この影響力はなんだ?と思ってしまう。何十年も若者たちに影響を与え続けるなんて、そんな小説は日本にない気がする。
「ライ麦畑で〜」は相当昔に出版された本だと思っていた(実際最初の出版は1951年!)から、本作の舞台が1995年だとわかって驚いた。主人公ジョアンナが勤めた出版エージェンシーでサリンジャーと関わるって話なのだが、出版後40年以上もたっているのに作者にあんな熱い手紙を送ろうとする人があんなに多いってことも驚いた。みんな熱意がすごい!
その手紙の数々に主人公ジョアンナがどんな返事を出したのかって話でなく、彼女が出版エージェントのスタッフとして働くのか、それとも作家として生きていくのかを突きつけられ苦悩し切り拓いていく話だった。そういう意味でサリンジャーがジョアンナにかけた言葉は影響力があったことがわかる。でもむしろ、レストランで紹介してもらった女性作家にかけられた言葉こそ、クリエイターとして生きようとする人たちに刺さるんじゃないかと感じた。逆にあのセリフを聞いてクリエイティブな仕事から身を引く人間がいてもおかしくない。それくらいに本質をついた言葉だった。
映画としては、恋愛ものとして中途半端だし、お仕事ものとしてもその後が気になる中途半端な終わり方だった。ウィキペディアでジョアンナ・ラコフを調べてしまったくらいだ。でも、意外と心に響いてしまった。いい映画だったななんて思ってしまってるんだから厄介なもんだ。

kenshuchu