「岸井ゆきの、凄くいい。」ケイコ 目を澄ませて アベちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
岸井ゆきの、凄くいい。
映画はワクワクするスリルやサスペンス。はたまた不幸のどん底ストーリーで観客を惹きつけたりするものである。だいたいは。
しかし、ここまで淡々と一人の女性を描くドラマになると、かえって、とてつもなく惹きつけられ、じゅわんとした感傷にひたれ、心地よい気分になれる。
聾啞者でボクサーという主人公のキャラクターはとても特徴的ではあるが、ストーリーの中に大事件も大事故も不幸の押し売りもない。
そして、主人公の周りの人々も皆、ケイコのことが好きで良き理解者である。意地悪な人なんかも出てこない。それがとても良い。
ジムの会長を演じた三浦友和がケイコを「人間としての器量があるんですよ」と記者に答えていたように、岸井ゆきのは映画の中で、直向きで努力家で人に優しい主人公を演じた。しかもセリフで発したのは、か細い声の「はい」とボクシングの試合で吼えた「うぉー」のみで、あとはしかめっ面の表情と時折みせる笑み。殴られた顔でさえ愛しく思えてくる。
岸井ゆきのは主演女優賞級の役者になったのでは?
とてもいい映画です。最高の作品に出会えました。
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