「この映画の紹介文が全て。」ケイコ 目を澄ませて うつつのつづきさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画の紹介文が全て。
コロナ禍で他人と距離をとりマスクをしている様は難聴の主人公にとってはさらに音を奪われた気持ちだろう。そんな彼女はマスクで読唇はできず、残されたコミュニケーションの手段である手話するその手にグローブをはめて人を殴り飛ばす。
それでも会長やトレーナーや彼女の家族をはじめとするケイコの周囲のいく人かの人間はそんな彼女と丁寧に接することをやめない。
ケイコは実はただ障がいのある人ということではなく、コロナ禍にあった私たちの象徴、もともとコミュニケーションに難のある現代人がコロナによりさらにその機会や能力を奪われた人たちだ。ケイコのボクシングは醸成されつつあったギスギスした人間関係がコロナでさらに悪化したことを表しているようだ。
しかし物語の最後、そんな現代人ケイコの前に現れたのは1人の作業服の女性。先日の試合の対戦相手だ。
これはケイコの殴っていたそのグローブの先の人間にも一つの"生"があることを気づかせた。
以降、ケイコにとってボクシングの意味は確実に変わったであろうということがわかる堤防の上の彼女の影、すれ違う人の影。エンドロール背景には時や人の営みを現すシーンが映し出されている。
……そんな解説を入れたくなる作品(笑
ついでに、、、
・カタカナでケイコとしたのは現代人を現すコードネームのようにしたかったのかも。
・岸井ゆきのの演技はまるでケイコという人物がそのままそこにいるような感じ。彼女の演技は☆5つあげたい。
・が、あまりに淡々と描きすぎているので離脱やつまらない等の感想を持つ方がいたらもったいない。
今回誰のレビューも見ずに作品を観て、レビューを書いたけれど、似たような作品印象が多いといいなと思ってる。