「静かに人の心に染み入る映画」ケイコ 目を澄ませて juniさんの映画レビュー(感想・評価)
静かに人の心に染み入る映画
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Amazon Prime Videoのバナーに現れた主演の岸井ゆきのさんの印象的な目を見て、そのまま引き込まれるように鑑賞しました。
聴覚に障害を持つ女性ボクサーの物語を16mmで撮ったという作品。
説明を読んだ後、「耳」でなく「目」を澄ませて、というタイトルに気づく。
岸井ゆきのさんはどこかで見たことがあると思い、調べると「前田建設ファンタジー営業部」で拝見していました。他にも地味ながらよい作品にたくさん出演されているんですね。
自伝をもとにした「フィクション」とは言え、聴覚障害を抱えながら、さらに女性としてプロボクサーになることのリアルが、美しく描かれていました。
美しくと言っても、華々しいシーンやわかりやすい感動のシーンがあるわけでもなく、
しかし、彼女が日常的に直面する葛藤や他人の無理解、人の温かさなどが伝わってきました。
下手な音楽で盛り上げようとせず、日常の音-街なかの雑音や、電車の走行音、ボクシングジムのミット打ちの音などがそれらの映像とともに流れているだけ。観客はそれらが彼女には聞こえないことを感じながら、大切な日常がそこに流れていることを感じ取ることができました。
最後に、河川敷で最後の対戦相手とあいさつした後の、岸井ゆきのさんの表情の演技は素晴らしいです。悔しさ、これまでの努力、それでも前を向いていく決意、それに気づいたことの爽やかさなどを想起させました。
このような映画を作ってくれた製作・役者陣の皆様に感謝します。
この映画のような、静かに人の心に染み入るような映画がもっと増えてほしいと願います。
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