「あの三人で頑張るシャドウのシーンが」ケイコ 目を澄ませて Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
あの三人で頑張るシャドウのシーンが
一つ一つ普通のシーンを積み重ねていくことで、自らと言うよりも、何かに突き動かされて続く「生」を描いた作品と言うことでしょうか。聴覚障害を持つ女性ボクサーの物語ながら、二度出てきた試合のシーンに突出したインパクトはなくて、ケイコの強弱様々な息遣いや視線、荒川の河川敷、足立の町並みなど、敢えて言うなら物語の背景のような日常が丁寧に描かれた。
生きていくことは、それ自体が大変なことであるが、大袈裟に構えたからうまくいく訳でもない。そう判っていても、入れ込んだら必ず見返りがあると願ってしまう。その願いを胸の奥にしまったケイコは、息を吐いてシャドウを続け、やや息を荒くして走り、息を整えて内なる声を発する。
歩みや走りを止めた時にいったん現れたりする結果は、道端の石塊に過ぎないこともある。しかし、諦めるか続けるかの両方の答えを抱えたボクサーの脇を、人生は傍観者のように無情に通り過ぎる。
ケイコが心に抱くものは、例えば「継続は力なり」と言う意思でもあったろうし、あるいは彼女が何かがきっかけで感じてしまった、運命とかだったかも知れない。ケイコを突き動かしてきた大きなもの。ただ、その手がかりをこの作品の中から推し量ることは、私には難しかったです。
ジムの会長から貰った帽子を、愛おしむように被って走るケイコ、自分を打ち負かした相手から挨拶されて一瞬、戸惑うケイコ。そうしたシーンは、観る者の心地を緩ませてくれました。特に、街灯に照らされながら、弟とその彼女と3人でシャドウにいそしむケイコの微笑み。このシーンの温もりこそが、私にとって最高のシーンだったと思います。
ギッシリ詰まった胸の内を危うく堪えている、岸井ゆきのの演技は素晴らしかったし、三浦友和の本当に喋るのが苦手で、若い頃は口より手が先に出て相手を殴っていた(かも知れない)オヤジ感も見事だと思いました。
Uさんさん、コメントありがとうございます♪
もう少しボクシング自体が持つ熱さを感じさせてほしかったと、個人的には思います💦
言葉少ない映画だからこそ、自分自身の言葉を付け足しながら消化していくという作業が必要になる、そんな映画でしたね👀
今晩は
いつも丁寧に私のレビューを読んで下さって、
本当に有難う御座います。
Uさんのレビューを読ませて頂いた時、とても感銘を受けて、
コメントしようかと思いました。
ケイコの姿や心理描写に情景が浮かび上がってきます。
私のレビューは、絞り出したというか、
苦労したのは意外と映画がウケ狙いではない難しい作品でした。
玄人向き的な。
Uさんのレビューは嘘がなくて無理してないので、とても伝わります。
岸井ゆきのさんの鎧を纏ってない時の笑顔、
弟さんとその彼女とのリラックスした表情。
演じた岸井さんもすごいけれど、その素顔の彼女と世間と闘っているケイコを
クッキリと対比させた三宅監督の手腕も凄かったですね。
(お話ししていたら少し前に進めた気がします)
ありがとうございます♪
> 3人でのシャドウのシーン
よかったですね、あそこ。
弟の彼女がダンスを教えるのも含めて、自分も好きなシーンです。人が共に近づき合うやり方って、こんな感じもあるよね〜、とすごく腑に落ちる場面でした。言葉じゃなくて、身体の動きをやりとりしあって、また一つ仲良くなっていく、という点が素敵でした。