「立ち止まったり迷ったり。その葛藤を淡々と。」ケイコ 目を澄ませて ごーるどとまとさんの映画レビュー(感想・評価)
立ち止まったり迷ったり。その葛藤を淡々と。
ボクシング映画は大好きです。鑑賞後になぜかシャドーボクシングしながら帰ってしまうような、あの独特の高揚感がたまりません。最近はただボクシングだけに焦点を当てるのではない、人間ドラマとしての良作が多くて期待しておりましたが、「アンダードッグ」や「百円の恋」のようなものを想像して観るとちょっと肩透かしをくらってしまうのは事実。
実在の耳の不自由な女性プロボクサーをモデルにしていて、主人公ケイコを演じているのが岸井ゆきのさん。3か月のトレーニングで体を作ったそうですが、体つきはもちろんのこと、目つきまでもこれまでの岸井さんとは全くの別人!「神は見返りを求める」のゆりちゃんの面影は皆無。
ほぼ台詞の無い役なので、体と目つきで全てを語っていて、お見事でした。
聴覚障碍者って見た目ではわからないことが多く、コンビニ店員やお巡りさんとのワンシーンで、あーそういうことなんだな、と日常の意思疎通の難しさを知らされました。
でも決して可哀そう、という目線ではなく、あくまでも日々の生活を淡々と描いているあたりに監督の想いが込められているのかなと。
劇伴は無く静かに生活音だけが聞こえてくる町の描写。
16ミリフィルムのざらざらした質感がその日常をより現実的に映しています。
立ち止まったり迷ったり、誰もが日々経験していること。
そしてどういう選択をしたにしても、自分で前に進んでいくしかないんですよね。
会長役の三浦友和さんがいいですよねぇ。三浦さんは若いときより最近の方がずっと演技に味が出て良くなりましたね。
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