劇場公開日 2022年12月16日

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「“ボクシング映画”?」ケイコ 目を澄ませて シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0“ボクシング映画”?

2022年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作の印象として、まず“好きな映画”というのがあるのだけれど、なんか感想が書き難い。
何処が好きで何を感じたのか、非常に言語化し難い作品で今回も何から書き始めればよいのか分からず書いてます。
とりあえず本作については私が観た岸井ゆきのの(恐らく)ベストアクトであり、三宅唱監督作品の中でも一番好きな作品となりました。

“ボクシング映画”に外れなしと言われていますが、近年作られたボクシングを題材にした邦画については全て良かったです。しかし、これらの作品って本当に“ボクシング映画”なのか?を考えると、ひょっとしたらそうではないのかも知れません。
まず“ボクシング映画”で思い浮かべるのは『ロッキー』シリーズですが、ひょっとしたらこのシリーズだけが特殊な作品であって、他の海外でのボクシングを題材にした作品も大半は“人間ドラマ”の方の印象が強く、決して“ボクシング映画”ではない様な気もします。

と、らちが明かない話から始まり申し訳ないですが、基本ボクシングを題材にした作品の共通点として心の芯が熱くなるというのがある様な気がします。
ただ『ロッキー』シリーズの場合は、ボクシングシーンで炎の様に熱くさせてくれるのに対して、ボクシングを題材にした“人間ドラマ”の方は、作品を通して弱火で時間をかけてジワジワ熱くさせてくれる様な作品が多く、本作もその点については同様でした。

で、本作についてですが、タイトルの“目を澄ませて”という意味ですが“耳を澄ませて”のモジりは分かるのですが、何に対しての言葉なのか?最初に思い浮かべるのはボクシングに対してですが、作品の構成を考えるとケイコに関わる登場人物一人一人に対しての言葉の様に感じられます。
この映画の構成の面白さは、“主役ケイコ”ではなく各シーン毎の“ケイコ対〇〇”自体が主役になっているということです。ケイコ対オーナー、ケイコ対弟、ケイコ対トレーナー等々、ケイコと相対する全ての登場人物との関わりがそのまま本作のテーマになっていて、ラストシーンでそれを明確に気付かされた時、観客である私は非常に気持ち良かったです。
ケイコもその時に悟りではないけれど色々な事が腑に落ちる感覚になったのではないのかなぁ~。

あと本作は16mmフィルムで撮られていて、やはり昭和の人間である私はこの質感が落ち着くし好きですね。

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シューテツ