「【”数学の天才青年が、交通が不便な村に簡易駅を作る事に拘った訳。”今作は、前半はほのぼのラブコメディであり、青年と父の思いが明らかになる後半は、ムネアツなファンタジックヒューマンドラマなのである。】」手紙と線路と小さな奇跡 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”数学の天才青年が、交通が不便な村に簡易駅を作る事に拘った訳。”今作は、前半はほのぼのラブコメディであり、青年と父の思いが明らかになる後半は、ムネアツなファンタジックヒューマンドラマなのである。】
ー 私は、年に数本映画館で韓国映画を観るが、ズドンと来る映画の比率は、邦画、洋画よりも高いのではないかと思っている。-
■高校まで相当に時間をかけて通うジュンギョン(ギョンパク・ジョンミン)は、線路しかない村に駅を作ってほしいと、大統領府に54通目もの手紙を送る。
天才的な数学の才能を持つジュンギョンの能力と彼に惹かれるクラスメイトの”自称女神”ソン・ラヒ(イム・ユナ:ご存じ「少女時代」の不動のセンターであり、コメディエンヌとしてもナカナカの人である。)の協力の元、彼は駅作りに向けて努力を重ねる。彼の傍には”いつでも変わらぬ笑顔”の姉ボギョン(イ・スギョン)が居て彼を叱咤激励するが、謹厳実直な列車の運転手である父テユン(イ・ソンミン)は、そんな彼の姿を見ても、何故か目を合わせずに、仕事に向かうのであった。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・前半は、どう見てもお互いに想い合っているジュンギョンに、矢鱈とちょっかいを出すソン・ラヒの姿がほのぼのと可笑しい。
ジュンギョンは迷惑そうな顔をしながら、ソン・ラヒと一緒に勉強したり、彼女の部屋でちょっとエッチな映画を観たりするのである。
そんなシーンの中で、何気なく描かれる線路を歩いて隣村に行く村人たちの為に、トンネルの入り口に列車が来る時の信号機を作ってあげるジュンギョンの姿や、川に架かった橋の上で怖そうに小さな待避所に逃げる村人たちの姿。
そして、あるシーンでは幼いジュンギョンが、数学で貰ったトロフィーを川に落としてしまい、それを拾おうと手を伸ばす姉ボギョンの姿が描かれるのである。
・だが、中盤になると徐々にジュンギョンが交通が不便な村に簡易駅を作る事に拘る理由が描かれるのである。この転調が実に上手いのである。
■川に落ちた姉ボギョンが、見つからないために村人たちが探し回る姿。だが、漸く出来た簡易駅に父テユンは、規則に則り止まらないのである。
父を演じたイ・ソンミンは、ご存じ韓国の名優であるが、私がこの俳優さんが出演している映画館で観た映画は、ほぼ秀作である。最近では「ソウルの春」である。
間違いなく、出演作を吟味していると思われる。
そして、今作でも後半、イ・ソンミン演じる父テユンが何故に息子ジュンギョンと眼を合わさなかったかが分かるのである。可なり沁みる。
だが、テユンはある日、息子ジュンギョンや村人たちが作った簡易駅”両元”に急停車し、10分もの間停まると、乗客に告げるのである。
そして、テユンは届けられた手紙を持って、自分の家に走りその手紙を息子ジュンギョンに渡すのである。その手紙は息子ジュンギョンが数学で韓国で一番になった事を知らせるモノであり、ジュンギョンは米国留学の切符を手にするのである。
その祝いの席のシーン。テユンは豪華な食事を息子ジュンギョンの前に並べるのである。その二人をいつものように笑顔で見ている姉ボギョン。テユンは酒を息子に注いだ後に、自分が何故に目を合わせなかったかを告げるシーンも沁みたなあ。それまで抑制した演技を見せていたイ・ソンミンの凄さ炸裂シーンである。ジュンギョンの母の死の真相。そして、姉ボギョンが川に落ちた時に、列車を運転していたのは自分で有ったと告げるシーン。父の仲間の運転士が”俺が運転していた事にするから!”と必死に話す姿もムネアツである。
<そして、ジュンギョンは米国に旅立つ。列車の中では姉ボギョンが隣に座っている。そして、彼が独り立ちした事で漸く姉ボギョンは輝く光の中、天に召されるのである。
空港では、ソン・ラヒが”何で、連絡しないのよ!”と言いながら待っているのである。そして、抱き合う二人。
今作は、前半はほのぼのラブコメディであり、青年と父の思いが明らかになる後半は、ムネアツなファンタジックヒューマンドラマなのである。>