劇場公開日 2022年6月10日

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「天才が活躍するありがちな思考停止を補って余りあるラテン風味が清々しいスペイン産クライムサスペンス」ウェイ・ダウン よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0天才が活躍するありがちな思考停止を補って余りあるラテン風味が清々しいスペイン産クライムサスペンス

2022年6月18日
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鑑賞方法:映画館

沈没船の中から回収した伝説の財宝のありかを示す手がかりをスペイン政府に没収されたサルベージ会社のボスと仲間達は世界一安全な金庫と呼ばれるスペイン銀行の地下金庫に保管されたその手がかりを奪還しようとする話。普通なら最新鋭のセキュリティシステムにするところですがこの金庫は19世紀の技術で作られたものでそもそもどんな仕組みかもさっぱり解らないという設定なのが面白い。そこで登場するのが天才的な頭脳を持つ大学生トム。大企業から次々に舞い込む破格のオファーも蹴り飛ばす変わり者のトムを仲間に引き入れてからの頭脳戦はある意味テンプレですが、この奪還作戦と2020年のサッカーW杯が同時進行というところにラテン味がさく裂。ということはクライマックスがあれとカブるわけですけど、もうそれがやりたいためだけの話やろ?レベルのシンクロ率にテンション上がりまくります。当時私もスペインを応援してましたし、こんな話ならユニフォーム着てくればよかったと激しく後悔しました。

個人的には天才なんとかみたいな思考停止と後出しジャンケンがある脚本って劇場版ナンチャラみたいな安い邦画の脚本みたいで好きではないですが、これは前述のローテク金庫とW杯を持ち込んだ捻りを効かせたお話を進めながら登場人物の心理描写も要所要所で盛り込んでジワジワとドラマのテンションを上げてさりげなくバラ蒔いていた伏線もサラッと回収する粋な作品に仕上がっています。『REC レック』シリーズとは全く趣が異なるジャンルながら、陰影が深くて奥行きのある映像と濃厚な心理描写にハウメ・バラゲロ監督の作家性が滲んでいたように感じました。

よね