「人類は一発屋の芸人」クルーガー 絶滅危惧種 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
人類は一発屋の芸人
原題は「Endangered Species」だから「絶滅危惧種」である。邦題の「クルーガー」の意味がわからない。南アフリカの国立公園だとしたら、キリマンジャロ山が見えるのはおかしい。地平線は約30キロメートル先である。高い山やビルはもっと遠くても見えるが、クルーガー国立公園からは、2,400キロメートル離れたキリマンジャロは見えない。台北からは2,000キロメートル離れた富士山が見えないのと同じだ。
邦題のことは置いといて、本作品の主役は出来の悪い家族である。娘の彼氏のレゲエのお兄さんみたいな男が一番まともだった。無茶な旅をする一家がサイに襲われて酷い目に遭う話だが、アメリカ的な家族第一主義に対して、ケニア的なエコロジーが所々で割り込み、何を描こうとしているのか、ピントが合わない。
エンドロールの前になって、密猟者が大量にいて動物を絶滅させているという紹介が出るが、毎年たくさんの種が絶滅しているのは、大抵の人が知っていると思う。立場によって絶滅種の数は異なるが、人間が絶滅させているのは間違いない。
絶滅を悪とし、存続を善とするなら、人類の存在を真っ先に否定しなければならない。しかし人類にも絶滅の運命が待っている。
有名な話だが、地球の歴史を24時間でいうなら、人類の登場は23時59分ころらしい。地球の歴史を1年に換算すると、人類の登場は大晦日の23時過ぎらしい。登場したばかりの新人が、地球を荒らしまくって種の絶滅を早めている訳だが、それも含めて地球の歴史だろうと開き直る考え方もある。電力を使わない生活に、いまさら戻れる筈もないのだ。
人類は一発屋の芸人だ。出てすぐに消えてしまう。芸風を変えたからといって、ウケるとは限らない。あるいは預金を食いつぶしながら生きている家族だ。節約しても、預金はいずれ底をつく。贅沢は敵だ、欲しがりません勝つまではと頑張ってみても、勝利は絶対にないのである。