リコリス・ピザのレビュー・感想・評価
全29件中、1~20件目を表示
冒頭からずっと怒ってるなぁという第一印象
ヒロインは冒頭からずっとイライラしており、劇中も大声での喧嘩ではなくとも小競り合いが多い。(冒頭では自分の現状へイライラしていた、というのはわかる)
今作は一般的な恋愛映画のようにキュンキュンしたりするシーンはほぼ皆無と言ってもよいかもしれない。
主人公2人の恋愛模様・仕事模様よりも、政治家の恋人とヒロインが泣きながらハグをするシーンが一番好きだし自分も泣いた。この場面のヒロインは好きだった。
同監督の「ファントム・スレッド」でも男女のチクチク言葉合戦があり、そして最後には結ばれていた(?)ので、この監督さんはそういう恋愛の形が好きなのだろうか…と思った。
「ウォーターベッド」と「ピンボール」に代表される70年代を舞台に描かれるちょっと変わった恋愛劇。って“形容”するのにこれ程困る映画も珍しい。もしかしてこれが褒め言葉?
①相変わらず長いポール・トーマス・アンダーソン映画。
『ブギー・ナイト』は70年代ポルノ映画界が背景なので面白かったけど、『マグノリア』は悪くなかったけどロバート・アルトマンにはまだ叶わないな、と思ったし、『ファントム・スレッド』も良くできた映画だけれども一回観たらもういいわ、という感じ。今まで観たこの監督の作品では唯一『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のみダニエル・デュ・ルイスの神演技と共に凄い映画だと思っている。
②で、この映画。基本は歳の離れた男女(15歳の男の子と自称25歳の女性とだが、それが何か?という感じだし)が紆余曲折の末結ばれるという話だが、はっきり言ってどうでもいい話(私にとっては)。
クール
大人が作った社会の中で、ゲイリーは欲しい物なんてないけど、手に入れる方法だけはしっかり心得ている。いつだって自分か世界の中心だから。
年上のアラナは既に自分が世界の中心じゃないことを知っているから、少し諦めながら自分の居場所を探している。
そんなあの頃のちょっとさえない二人の物語を、PTAは最高にクールな手法で描いてくれた。
鑑賞者に対して、感情や共感、懐かしさを押し付けない。「一生懸命作った映画を見届けてくれませんか」と言わんばかりの謙虚さに監督の映画愛を感じた。
逮捕されたゲイリーを乗せたパトカーを全力疾走で追いかけるアラナ。
ホールデンのバイクから落っこちたアラナのもとに全力疾走で駆け寄るゲイリー。
いくら駆け引きしたって、いざとなったら相手のために走り出しちゃうのが恋だよね。
同性愛者がカミングアウトするには、まだまだ階段を登らなきゃならない時代。彼の家の前に聳え立つ階段の先が少し明るかったのが印象的。
そこでアラナは自分の中の愛を自覚する。
ラストの、二人が全力疾走で出会う場所は映画館のチケット売場。シネフィルらしい直球をバシンと受け取りました。
それから、ゲイリーが慣れない煙草をふかすシーンにグッときた。お父さん(フィリップシーモアホフマン)の、おっさんの色気のある所作が垣間見えた。
ちょっとビターだけど、ハッピーでノスタルジックな天才の素顔に、皆恋をする
ハリウッドの映画監督で50代はまだまだ中堅と言った所か。
しかし、ポール・トーマス・アンダーソン(以下PTA)にはベテランの風格がある。『ブギーナイツ』『マグノリア』の頃から“若き巨匠”と呼ばれてたっけ。
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』からのシリアス劇で、“若き”ではなく名実と共に名匠の地位を確固に。世界三大映画祭での受賞やアカデミー賞での複数回のノミネートは、この天才の才能を示す一例に過ぎない。
その非凡さを表すのは、言うまでもなく外れナシの作品群。
常に一癖ある作品を発表し続け、近年は深淵なシリアス劇続き、待望の新作は何と! 少年少女の青春ラブストーリー。
PTA作品としては異色のジャンル。
でも、そうでもない。70年代が舞台で、生まれ故郷のLAサンフェルナンド・バレーを描く。
ユーモアやノスタルジックさも漂わせ、初期の『ブギーナイツ』『マグノリア』『パンチドランク・ラブ』を彷彿。
異色ジャンルではなく、原点回帰のPTA作品。
とは言っても、この鬼才が平凡なボーイ・ミーツ・ガールを撮る訳がない。やはり一癖あり。
映画やTVドラマで子役としても活躍している15歳の高校生男子、ゲイリー。
彼が一目惚れしたのは、たまたま学校に写真アシスタントとして来ていたアラナ。25歳。
この10歳の歳の差の恋の行方が、見る者をやきもき、いじらしく、胸かきむしる。
ゲイリーはお喋りでナンパ。会って早々、“運命”なんて言ったりして。それでも何とか食事に漕ぎ着ける。
しかし、アラナの反応は素っ気ない。年下には興味ない感じ。
アラナが興味を持ったのは、ゲイリーの仕事の芸能の世界やもっと大人地味た子役。
ゲイリーは他人のフリして電話。すると、自分と話す時は素っ気ないのに、ウキウキ声。ショックを受ける…。
アラナは別の男子を自宅の夕食に招くが、とある揉め事に…。
もう子役って歳でもなく、かと言って大人でもない。これからも役者やっていっても見通しは無い。
そこで、事業を展開するゲイリー。ウォーターベッド販売。再会したアラナにも声掛け。
突然、ゲイリーが逮捕。人違いですぐ釈放されるが、茫然自失。
アラナはゲイリーが乗せられたパトカーを走って追い掛けたり、警察署から出てきたゲイリーを本気で心配したり、何だかんだ気に掛かる。
これがきっかけでアラナはゲイリーのウォーターベッド販売を手伝い。
勿論ゲイリーはまたアラナにアプローチするが、例によってアラナの反応は…。電話アポで相手の男性に色っぽい声で話したり、ゲイリーはやきもき。
気があるんだか、無いんだか。相手の反応を見るようにからかってみたり、お互い別の相手にふらふらしたり。そんな態度取ったと思えば、また親密になったり。
どっちやねん?!…と言いたくなるが、素直になれない両人の心情が本当にいじらしい。
でも二人に共通しているのは、精一杯大人地味たり、今の自分からの脱皮。
事業なんかして、大人の男をアピールするゲイリー。何か、スーツに袖を通して、身の丈や格好がまだまだ追い付かない感じ。
そんなゲイリーとは違って、大人の女をアピールするアラナ。
しかしそんなアラナも年上の男性や大人の世界に憧れたり、政治の世界で働いたりする。
ゲイリーの子供っぽさをコケにするが、やってる事は同じ。彼女もまだまだ大人に成り切れない。
二人を取り巻く大人たちが滑稽。
ダンディーな映画俳優は、友人の映画監督と急遽炎のバイク・スタントを披露。
ウォーターベッドの発注で向かった映画プロデューサーは、傲慢破天荒。
アラナがアシスタントとして働く選挙事務所。ある時議員に呼ばれるも、あるゴシップ隠しに利用され…。
大人たちに幻滅。これが、大人の世界か…。
その中で振り回され、右往左往する僕たち、私たち。
オイルショックでウォーターベッド販売に翳りが見え、ゲイリーは性懲りもなく別事業を展開。ピンボールマシン店。
政治の仕事に携わるアラナにしてみれば、子供と一蹴。
相手にイライラしたり、当たったり、喧嘩したり…。
またまた二人はそれぞれ別の道を行く。
嗚呼、本当にいじらしい!
それを体現したのは、フレッシュな主演二人。共に映画や演技デビューで、本当に“フレッシュ”なのだ。
“ハイム”という三姉妹ロックバンド。いつもながら知らぬが、三女のアラナ・ハイムが同名のヒロインを演じる。
ゲイリー役には、クーパー・ホフマン。PTAの常連だった故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子。このキャスティングが泣かせる。
ただの親の七光りで選ばれた訳ではあるまい。無論亡き盟友への思いもあるだろうが、しっかりとした演技力。本当に15歳?…と思うくらい、父親譲りのご立派な体型。
二人が瑞々しい好演を魅せてくれる。
ブラッドリー・クーパー、ショーン・ペン、ほんの一瞬だが常連ジョン・C・ライリーも顔を見せ、特にクーパーははっちゃけ演技を披露するが、今回ばっかりはフレッシュな二人をバックアップ。
今後の活躍も期待。
PTA作品としてはこれまでで最もマイルドで見易く受け入れ易いのでは…?
楽曲もいい。
タイトルは食べるピザとは関係ナシ。この地区などで展開していたレコード店の名称だとか。日本で言ったら、タワーレコードみたいな…?
サンフェルナンド・バレーの町並みや雰囲気も、知らぬ場所で生まれてない時代なのに郷愁誘う。
それを最もよく表したラストシークエンス。
親密になったり、喧嘩したりの繰り返し。でもやはり、お互いにとって欠けがえのない存在という事を改めて知る。
映画館の前で(上映しているのは『007』!)、ぶつかる勢いでハグ。
このハッピー感、愛らしさ!
とてもとても『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』や『ザ・マスター』や『ファントム・スレッド』と同じ監督とは思えない。
だからこそ常に見る者を唸らせる非凡さ。
いやそれより、これが天才の素顔なのかもしれない。
どうせならPTAさん、
続編作って二人が(勿論色々すったもんだあって)結ばれるまでを描いてみてはどうでしょう??
"男ってみんなバカで嫌になっちゃう"
子役として活躍、他にもビジネスをやったり15歳にして絶好調のゲイリーと未だパッとしない人生に不満しかない25歳のアラナが出会い、微妙な距離を保ちながら共にすごしていく話。
ゲイリーは幼くして金稼いでるし周りにチヤホヤされてるから、15歳にしてもうトランプのような風情漂わされた子供おじさん。いくら態度がデカくても子供だから、行動が幼稚で馬鹿。子供だからやっぱダメだと思いきや、出てくる中年男やジジイ、全員バカ全員しょうもない(笑)
でもそうやって男を値踏みして比較してるアラナだって子供で馬鹿。自分はあいつと違ってバカじゃないと思ってる時点でもう子供。自分のことは棚に上げて値踏みする世の女性達よ、ブスブス刺さるよ(笑)
だからこそ、最後のお互いがお互いに会うために走っていくベタベタなシーン、「やっぱりあなたしかいない!」じゃなくて「今のダサい自分を受け入れよう」って感じがした。いつもならシラケるけど、すごく清々しく見れた。だって今はゲイリーが1番ハマってもいつかもうちょっと成長したら、選挙ボランティアの同僚の方にハマる日が来るかも、、笑
アメリカの70年代の実際の要素が練り込まれてるらしいけど、私はそれより警察から出た2人が走り抜けるシーン、燃料切れになったトラックを傾斜で転がる力だけで運転するアラナ、やたらと失礼なことをタバコを吹かせながら言うけど表情がなんともいえない良さを醸し出す芸能事務所のばあちゃん、、などなど、良いシーンの宝庫だったな。この馬鹿どもをずっと見ていたいと思った。
あとは、海外映画史上1番(言いすぎかも)日本人女性をちゃんと使ってくれてて嬉しかった。女の人に限らず基本日本人の使い方って雑で、英語理解できなくて頭ペコペコ顔ニコニコみたいな。でも今作は、自分の主張を堂々とした態度で英語も理解した上で日本語で話してて(片言じゃないのも大事)、嬉しかった。しかも美人ではなく、山村紅葉をなめらかにした感じのママでそこ
ふたりの美男美女じゃないビジュアルが良かった。 共感はしないけどあ...
ふたりの美男美女じゃないビジュアルが良かった。
共感はしないけどあどけなさものこってる野心家ゲイリー×色々拗らせアラナの組み合わせの空回りっぷりがとにかく見ていて面白かった。
ベッドに水溜まっていくのを見ている二人、テイルオコックでの鉢合わせ、アラナの覗き見、ベッドで胸触る、ビンタとか色々シュールだったり、面白いカットがたくさん。
キミコさんのいきなり「ウェイトレスなんてどうでもよくなーい?」の日本語炸裂で吹いたw
クーパーの開幕マシンガントークでの脅しっぷりからのガススタライターとか基地っぷりも相当キテる。
70年代のLAの街並みれて嬉しい。この近郊の歴史や文化事情知っていたらもっと楽しめるんだろうなと思った。
清々しい
爽やかに終わりやがって!元気もらえました笑
アラナは名誉と権力がある男達に誘惑されながらも、結局付いていけない。
ゲイリーは16歳男子。若い。
2人とも素でぶらぶらしている部分と、お互い当てつけっぽいところもあるのが憎めない。
説明っぽくなく、いつのまにか映画の世界に入っていたのがよかった。
アラナがくしと鏡を貸し出すところから始まって、ああ、学校に写真を撮りに来ているスタジオの人なのね。というところから始まり、ゲイリーが子役からウォーターベット売りになって...とめくるめく展開。
ビラ配りの長ーく走っていくところや、窓に映った姿など、画面に飽きない。
音楽もよかったと思うんだが、1回目は画とストーリーを追うのに集中してしまった。今度は音楽に注目してみたい。
リコリスって、あのリコリスだよね?。。。じゃなかったけど。
不味いと有名な真っ黒いやつだよね?
その、ピザ?
ちょっと癖のある登場人物とそのまわりのかかわりを示してるのかな?
と、タイトルに興味をもちながら鑑賞へ。
なるほど…
個性あふれる登場人物がわんさかなのですが、
まず主役のふたりがリコリス!(=個性派という意味で笑)
そして子役を仕事にしてる高校生・ゲイリーと、彼が一目惚れしたカメラマンアシスタントのヒロイン・アラナの出会い方もリコリス!
歳の差ありだし、自信がなく躊躇するアラナに対して、芸能界で育ってきたゲイリーは怖いもの知らずの余裕たっぷり。
そんな2人の印象は年齢さておき、似合いそうで似合わない。
でも、ゲイリーの推しの強さで、ふたりは恋愛ラインに届くかどうかのあたりをヤキモキしたり、ハラハラしたり、なんだかじれったく、クールにすすまないカッコ悪さだらけで進む。
この青くさーい恋愛の初々しい駆け引きや不安や期待のじわじわ感。
なんか思い出す。
大人になってから実家の自分の部屋に置きっぱなしになった思い出あるぬいぐるみを目にしたときのような、
古いカセットテープのラベルの字をみて急にレモン色の湿り気に包まれるような、
乾いた空気にいまもリアルな温度だけが指先に舞い降りるような、、
そんな胸の奥をツンツンつつかれるノスタルジー感。
そして、とりまく人々のあるようでなさそうなこれまたクスリと笑えるリコリス!ぶり。
それらがアラナとゲイリーのエピソードに“味変“をもたらすトッピングとなるのだ。
こうして70年代の風景丸出しの大窯で焼き上げられた一枚のピザがTHE青春恋愛映画「リコリス・ピザ」
はじめのうち、仕事にちょっと疲れ、生き生きしてみえなかった表情のアラナがはつらつとしてきて潜んでたキュートな魅力が滲み出してきたときにはほおぅー♡と思った。
生意気なゲイリーも、あどけないこどもっぽさが目立っていたが少しずつ、大人にかわっていく様子がわかる。
後半、アラナのもとへ走るゲイリーの姿はまさにそれ。
誰かに惹かれる状態って腑抜けになるっていわれるけど、実際は充電されてる状態なんだろうね。
いいね、いいね。
どうしようもない切なさも苦しさも
後に自分の糧になるのを知るまえの季節。
しかし、まだまだまだまだ絶対落ち着くはずもないよねーという予感しかないリコリス・ピザは
私にはLPレコードの名ではなく、タイムスリップ青春ソースという期間限定の癖のあるなかなかおいしいピザだった。
【良かった点】 特に何が起きるわけでもない。あっちに行ったりこっち...
【良かった点】
特に何が起きるわけでもない。あっちに行ったりこっちに行ったり、相手に振り向いて欲しいだけ。ティーン特有の恋愛観を映像で華麗に切り取っていた。なんだかんだ、お互いしか見えてないんじゃん!っていうの最高。
【良くなかった点】
いまいち年齢差の設定を活かしきれていない印象だった。子どもっぽいところが嫌い、のような描写はちょこっとあるが、年齢差が故の悩みではないように感じてしまった。(個人的に年齢差、特に女性が歳上のカップル萌えなので厳しめ笑)
70年代前半の米国西海岸ハリウッドに近いとある町。 高校生のゲイリ...
70年代前半の米国西海岸ハリウッドに近いとある町。
高校生のゲイリー(クーパー・ホフマン)は子役として活躍する一方、なにか一山当てたいと考えている野心家の少年。
ある日、学校にやって来た写真助手のユダヤ娘アラナ(アラナ・ハイム)に一目ぼれ。
彼女はゲイリーよりも10歳も年上なので、まるで相手にしないのだが、あまりに積極的なアプローチに断り切れず、夜の食事を共にした。
その後、事情があってゲイリーのニューヨーク出張仕事に同行できない彼の母親に代わって、付添人として同行したアラナだったが、それが友だち以上恋人未満、主としてビジネスパートナーとしてのふたりの奇妙な関係のきっかけとなった・・・
といったところからはじまる物語で、とにかく前半が秀逸。
友だち以上恋人未満、主としてビジネスパートナーという奇妙な関係で進んでいく男女の関係がとにかく面白い。
ゲイリーにしてみれば、アラナは「憧れの年上のひと」なのだが、どうもゲイリーは気が多い。
すぐにほかの女性にも気を取られてしまう。
対するアラナ。
これまた気が多く、同行したニューヨーク出張仕事で、ゲイリーの共演者のユダヤ人青年に気を許し、祝祭の食事に招待するが、無神論者というユダヤ人青年はアラナの父親の逆鱗に触れてしまう。
これを皮切りに、生来の上昇志向も災いして、大物スターと危うい関係になりそうになったりと、とにかく不安定極まりない。
しかしまぁこの不安定さというのは、70年代前半の不安定さのようなものでもあり、ベトナム戦争は泥沼化しているし、ハリウッドはニューシネマの時代だし、最終的には中東戦争のあおりを食らってオイルショックまでやって来る。
不安定だが、不安で不安でどうしようもないという心情ではなく、ゲイリーは、ウォーターベッドでの盛衰の後、ピンボールマシーンで再びビッグビジネスを成功させそうだし、どうにかなるのではないかしらん、と少々能天気に生きていられた時代でもあったような気がします。
映画後半まで、ゲイリーとアラナのくっつきそうでくっつかないエピソードが繰り返されるので、少々失速気味。
ショーン・ペンやブラッドリー・クーパーらの有名俳優も登場するが、彼らが登場してからあまり面白くないというのが残念なところ。
最後は・・・
そりゃ、ゲイリーとアラナはうまくいきますよ。
なんてったって、70年代。
不安定で不安な気持ちになりがちだけれど、少々能天気に生きていられた時代なんですから。
ポール・トーマス・アンダーソン監督作品では『パンチドランク・ラブ』を思い出しました。
ちょっと安心
評判高いが見たことないPTAの、アカデミー賞ノミネート作品、どれだけ面白かろうとレビューも見ずに鑑賞。ストーリー至上主義のおいらには全くはまりませんでした。皆さんのレビュー読んで、同じ意見が多くてちょっと安心。
そうは言っても、ラストで右から女が、左から男が走ってくるところで一時間くらい前の同ポジのカットが一瞬入ったりするとなぜか盛り上がるのは映画好きの性なのか。あとはショーン・ペンがバイクで走り出してバコッと落とされるとこは素直に面白かったなあ。
ヒロインは、普通の子が最後に可愛く見えてくるパターンかなぁと思ったら、意外に途中で可愛く思えてしまいました。姉妹や両親も同姓だったようなのでまさかのマイスモールランド式。
欲望丸出し
久しぶりに、早く終わってくれないかと思った映画でした。
監督の作品は初見です。
きっと他の作品を勧められても観ないだろうな、くらいには魅力を理解できませんでした。
良かったところ
・ワックス議員の恋人マシューが切なくて、とてもキュートだった
個人的に、恋愛は夢見がちなものが好きなので、彼のように切実で言葉の端々に愛おしさゆえの苦しさがでている感じを好ましく思ったのでしょう。
・画づくり
あの年代の美術全般、インテリアやファッションヘアメイクをすばらしい完成度で観れたのは眼福。あくまで、側の話で主演やヒロインは全く魅力的ではない。後述します。そして、場面の切り取り方は美しかった、、、。タイトルロゴから一貫して、おしゃれでした。後世にもファッションを参考にできる映画として語りつがれそうなレベルです。
・弟の存在感
主演の兄とは似ていない美貌。端役なのに、圧倒的な存在感で弟メインになりはしないか期待しました。オーラというか、気怠げさと幼さが独特で引き込まれました。
好みではなかったところ
・ゲイリーとアラナ
まっっっっっっっっったく、魅力を感じませんでした。ロマンチックかと思いきや下衆で移り気なゲイリー、ゲイリーと遜色ない移り気さと身勝手な奔放さで下品なアラナ。(付き合ってないとはいえ、とても自由です。でもこれって、文化の違いなんですかね?)
はっきり言ってなぜアラナに惹かれたのかがわからず、冒頭から置いてけぼりでした。年齢差は少しキーであろうポイントなんでしょうが、女性側の、若い子への負い目みたいなものがすごく醜悪な形で表現されていて、それも目を背けたくなるところでした。中盤、とても20代には見えないほど顔が疲れるのはどういう意図なんでしょう?
・エピソードの畳み掛け
ともかく色々なことが大小起こり続けるのですが、すべては無為です。伏線やらメタファーはありません。若い時バカやったよね、アハハ!的なエピソードの畳み掛けです。そして主演2人の欲望のままにストーリーは続きます。それを、若き日の追憶としてふふふ。と見るのがこの映画という波を乗りこなすのに適した態度なのかもしれません。しかし、わたしは飲み込まれて砂浜に何度も叩きつけられ沖にも行けず、鑑賞時間中打ちのめされました。ハァ。
しかし、鑑賞後思い返してみればそれなりに学びがありました。
もうPTA監督作品は観ないほうがいいこと。
そして、ひとは自分が相手に取った態度通りに扱われるのかもしれないということ。アラナのほうがわかりやすいですが、金や才能に靡けば若さに打ち負かされ、権力にしなだれかかれば力同様の勢いで良いように使われ振り払われ、最後は全く似た相手を求めあうこと。
人に対して、真摯でいようと身につまされました。
自身が1970年代くらいのアメリカを生きていたら楽しいのかも。
自分が思う青春時代のキラキラとはちょっと違うし、なかなかクセスゴなひとたちが出てくるし、主人公の二人の気持ちもよくわかんないし、顔も好みじゃないし、ほぼポカーンたまにクスクスおもしろ、そして終盤ちょっと眠たくなった映画でした。
アカデミー賞たまに全然ピンと来ないやつあるけど、まさにそれ。アメリカ文化を生きた人なら楽しいのかしらと思います。昔のアメリカを覗き見できて、それはちょっと楽しかった!
クズまみれ
アカデミー賞ノミネート作品賞ということで、なんとなくのあらすじを見ただけですが鑑賞。ちょっとワクワクしてました。
ただまぁ、引くほど面白くなかったです。めっちゃうつらうつらしてしまいましたがそのクズっぷりにギリギリ意識を保ち続けられました。
まず登場人物に魅力が無いのが欠点です。それすなわち俳優さんたちに魅力が無いと言っているのと同義ですが、まさしくそうです。言い方が悪くなってしまいますが、太っちょボンボン無策な自信家、性格がひねくれてる、成長が見られないという美点なさすぎな主人公、ヒロインも引くて数多のように描かれますが、常に口は悪いですし、時と場合によって人柄を豹変させるタチの悪いクズさを持ち合わせているものですから、こっちも好きにはなれません。
互いが互いよりも優位な立場に立ちたい、ラブコメでもどちらが先導するか(かぐや様がそのないでは真っ先に浮かびましたが、こっちの争いは非常に愛らしいものですから比較するのも酷でした)が肝になってくるのですが、2人ともマウントを取り合うばかりで醜い争いにしか見えませんでした。ドキドキも胸キュンも微塵も無いんです。オチも急すぎて、尚且つ駆け足すぎて全然スッキリしません。アメリカと日本との価値観の違いも大小あるとは思いますがそれにしてもこれは無いです。
古き良きのアメリカの姿は良かったですが、正直それくらいしか褒めれる所がありません。期待外れでした。
鑑賞日 7/5
鑑賞時間 17:40〜20:00
座席 I-9
PTAの描く世の中の不条理と、一風変わった連中の日常を切り取ってはいるが、自信家のゲイリーと人生にくすぶっているアラナが、正統派青春恋物語をグイグイひっぱっていく。
何よりも主演二人のみずみずしさがまぶしい。ゲイリーを演じる【クーパー・ホフマン】はそのムッチリボディがどこにでもいる15歳として輝いているし、アラナ【アラナ・ハイム】は【安藤サクラ】的な存在感で、ふてぶてしく不機嫌でもあるがピュアで愛らしい役柄を演じている。
オープニングの二人の出会いから歩きながらの会話でつかみはOK。徐々にアラナがゲイリーに魅力を感じていく様にキュンキュンしてしまうのだ。
中盤、ゲイリーがアラナに電話するシーン。無言でただ息遣いを感じ受話器を握りしめる二人。ゲイリー電話を切ると今度はアラナがゲイリーにかけ直す。さっきの息遣いでお互いに相手が誰だかわかっている(息遣いはキーワードです)。いつもしゃべりすぎの二人にとってこの無言電話のシーンはすこぶる冴えている。何より電話をかける二人それぞれの部屋の雰囲気と照明の演出がしびれる。これはPTAと数多く組んでいる名ギャファー、【マイケル・バウマン】の腕によるものだろう。
『マクベス』、『フォードvsフェラーリ』、『バイス』、『ファントム・スレッド』、『ナイトクローラー』など、照明の妙を存分に味わわせてくれたのはバウマンだ。【トム・ウェイツ】の弛緩した表情さえ味のあるものとなって映し出す。
また、どのシーンも70年代っぽい雰囲気と電球の味わいに満ちており、特にピンボールの店やバーなど、夜の演出が素晴らしい。
車と、走る二人の繰り返し演出も、青春の疾走感を投影していてこれも成功している。
スポーツカーを飛ばす【ショーン・ペン】
ショーン・ペンの暗い背景の中でのバイク
ガス欠トラックのバック運転
ゲイリーが怒りと共に自分で運転してでかける
ティーンフェアへ向かう車内の面々
まぶしいようなハラハラするような、そんな70年代の青春がここにあった。
2022年7月9日追記:
鑑賞後にIMDbを見てみると、いくつかのトリビアがあった。
・ウォーターベッドを売りつける怪しいオヤジを演じていたのがレオナルド・ディカプリオの父親である
・リコリス・ピザとはリコリスのように黒くて平べったい形なので、スラングでLPレコードのことを指す(作中リコリス・ピザというレコード店がありますね)
・アラナがオーディションで発するセリフはウィリアム・ホールデン主演、クリント・イーストウッド監督の『愛のそよ風』(Breezy)で、ジャックとアラナのセリフはこの作品からとられている
・トラックをバックで走らせるシーンは実際にアラナが運転していて、スタントでもCGでもない
その他、 ・テレビニュースでニクソンがウォーターゲート事件についてコメントするシーンとゲイリーが新聞にディープスロート(ポルノ映画の方)の広告をチラ見したりと、当時の社会現象もうまく取り込んでいたのも面白い。ワックスの選挙事務所前で男が監視しているのは『タクシー・ドライバー』を彷彿とさせたりといつものPTAの遊び心も満載だった。
染みる!
「みんなクソだよな」って言葉に只々救われる!
昔、「のぞき屋」って漫画で
「人の身体から出るものはみんな汚ない!」
「それを愛せるか愛せないかだろ!」
なんてやり取りがあったけど、
それと重なりもして、
いやぁもう、染みるぅ〜〜っ!
全29件中、1~20件目を表示