湖のランスロのレビュー・感想・評価
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ストーリー、というよりも…
学者には中世騎士の写実性を評価された映画ということもあって、そこへの力の入れ方が
すごい!
中世当時の騎士道物語といえば、栄光と恋愛が骨子になっていますが、現実的にはそれぞれ表裏がありますね
まず栄光ですが、職業軍人としての泥臭い戦争で立てる功績もあれば、馬上試合や決闘のような、華々しい個人の闘争によって掴み取るものの二種類があるのです
演出も派手に娯楽性を持たせ、個人対個人の腕比べ的な性質のある後者に比べ、当時の戦争は”少数精鋭の騎馬隊による集団戦”で、某ドラマのように、本来鋭い剣でズバズバ切り倒すことのできない重装騎士は、槍や大剣(作中のものはゲームや映画などのせいで小さく見えるかもですが、十分重くて大きいんです)で”かち割り”、”叩き潰す”ことでしか倒せません。槍で仕留めきれなければ、くんずほぐれつしながら剣でカチンカチン叩き合うしかないんです。鉄の鎧…続きを読む
円卓の騎士たちの寒々とした終焉
『たぶん悪魔が』と同日に観たブレッソンの日本劇場初公開作品の2本目。とにかく観た順番が悪かった。陰鬱な気分のまま観た。
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「アーサー王伝説」の後日譚という今作。聖杯の探索に失敗し多くの死者を出した円卓の騎士たちが城に帰還した。
不倫関係にある王妃グニエーヴルと円卓の騎士ランスロだったが、二人の間に温もりなど微塵もなかった。
スキャンダルを盾にランスロを貶めようとする騎士たち。騎士道精神の崩壊とともに呆気なく終焉に向かう円卓の騎士たちがいた。
暗がりの中で何の光も見えなかった。
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この後、1977年の『たぶん悪魔が』、83年の『ラルジャン』を遺したブレッソン。世の中に絶望したようなまったく希望のない作品たち。99年に98歳で亡くなるまで彼は何を思い生きていたのだろう。
ユニークさに感心はするけど感動や楽しさは皆無
フランス語とか西洋中世史とか聖杯伝説とか詳しくないからストーリーはイマイチよく理解できなかったし説明するつもりも全然ないみたいだったけどヨーロッパ中世の情景がエキゾチックで意外と楽しめた。騎士の甲冑姿とか馬上での剣術の試合とか森の中を走るかっこいい馬たちとか。撮影が素晴らしいし短いのも良い。ただ中世ものなら最後の決闘裁判のほうがずっと面白いけどね。
作品の雰囲気は殺伐としてて登場人物はとにかく深刻で陰気で無表情で生きるのが苦痛で喜びが全く無い感じ。中世ってこんなに暗い時代だったのかねえ。あと、けっこう残酷っぽい描写が悪趣味だと思った。
この監督の日本で観れる作品はほとんど観たけど、独特の美学があってユニークだしカッコいいとは思うのだが全然感動しないんだよね。僕の人生に何の影響も与えることがないというか。まあどの作品にも共通している殺伐とした雰囲気が結構クセになるのは否定しません…続きを読む
中世の「箱庭」の中で展開する、騎士と王妃のミニマルな不倫劇。ジョスト競技の異様なグルーヴ感!
開幕早々の三隈研次ばりの首チョンパ&大出血スプラッタ(笑)。
とくに、杵みたいなので頭ごいーんとしたら、兜の下から血がじょば~ってのが良い。
え、ロベール・ブレッソン的にそれはありなんだ? とちょっとびっくり。
ただ、話が進めば、いつものブレッソンだ。
というか、ブレッソンが提唱する「シネマトグラフ」っぽさは他作以上に顕著。
人形のような俳優の扱い。棒読み、無表情の強烈な「言わされ感」。
もちろん、出演俳優はみな演技経験のない素人ばかりである。
ミニマル・ミュージックのように反復される同一動作、同一事象。
なんだか、映画じゃなくて絵コンテでも読まされているかのようだ。
監督に与えられた「型」が、古典芸能ばりに全編を支配している。
それは、もはや「型」というより、役者に課せられたある種の「枷」だ。
たとえば、初…続きを読む
異色の時代劇
ブレッソンによる唯一のスプラッターと私個人は勝手に認知している。しかし、内容はブレッソンならではの静かな真実を映し出す。神、愛、信の三つ巴の中で翻弄される勇者の姿。間違なく素晴らしい出来の作品である。
黒澤明ならどれ程素晴らしく撮っただろうかと考えてしまった。ブレッソ...
黒澤明ならどれ程素晴らしく撮っただろうかと考えてしまった。ブレッソンにはあまり向いていないジャンルだったのではないか。
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